「国家の役割」を最小化すると最後はどうなるのか 保護されるのは「人身と所有に対する権利」だけ

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たとえば、ジョナサン・ウルフ『ノージック―所有・正義・最小国家』では、国家の役割を次のように定めています。

① 侵略行為から市民を守り、警察や裁判所によって市民をお互いから保護する。

② 道路、消防サービス、図書館など、多様な公共サービスを供給する。

③ 病気、貧困、失業といった理由のために、自分の面倒を見ることができない市民の世話をする。

④ 映画を検閲したり、特定の薬物を禁止したりするように、個人の生活をある程度監督する。

民営化される「国家が行なっていた」サービス

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このなかで「最小国家」というのは、①の部門つまり「人身と所有に対する権利を防衛することだけ」に限定されるのです。

言い換えると、「最小国家」では福祉援助もパターナリズム(夫権的干渉主義)も禁止されるのです。

では、最小国家で、もし①以外のサービスを受けたいとすれば、どうすればいいのでしょうか。

リバタリアンの答えは、そのサービスを有償で提供する会社と人々が個人的に契約をすればいい、となります。

従来の国家が行なっていた多くのサービスは、たいていが民営化されますので、必要な人だけが契約すればいいだけの話です。

その分、国家に支払っていた税金が安くなる、というメリットもあります。

(出所:『知を深めて力にする 哲学で考える10の言葉』より)
岡本 裕一朗 玉川大学 名誉教授

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おかもと・ゆういちろう / Yuichiro Okamoto

1954年福岡県生まれ。九州大学大学院文学研究科哲学・倫理学専攻修了。博士(文学)。九州大学助手、玉川大学文学部教授を経て、2019年より現職。西洋の近現代哲学を専門とするが興味関心は幅広く、哲学とテクノロジーの領域横断的な研究をしている。著書『いま世界の哲学者が考えていること』(ダイヤモンド社)は、21世紀に至る現代の哲学者の思考をまとめあげベストセラーとなった。ほかの著書に『フランス現代思想史』(中公新書)、『12歳からの現代思想』(ちくま新書)、『モノ・サピエンス』(光文社新書)、『ヘーゲルと現代思想の臨界』(ナカニシヤ出版)など多数。

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