「国家の役割」を最小化すると最後はどうなるのか 保護されるのは「人身と所有に対する権利」だけ

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民主制はやがて衆愚制になり、政治を腐敗させてしまうのです。それに対して、プラトンは次のように述べるのです。

哲学者たちが国々において王となって統治するのでないかぎり、あるいは、現在王と呼ばれ、権力者と呼ばれている人たちが、真実にかつじゅうぶんに哲学するのでないかぎり、すなわち、政治的権力と哲学的精神とが一体化されて、多くの人々の素質が、現在のようにこの二つのどちらかの方向へ別々に進むのを強制的に禁止されるのでないかぎり、国々にとって不幸のやむときはないし、また人類にとっても同様だ。(『国家』)

こう語るプラトンにとって、どんな国家が構想されていたのでしょうか。

その1つは、「男女同業」という考えです。つまり、男性であれ女性であれ、同じ仕事をするということです。現代の言葉で「男女共同参画」といったほうが分かりやすいかもしれません。

これは、当時のギリシア社会では、かなりぶっ飛んだ思想といえます。これによれば、もちろん、女性は戦争にも同じように参加しますし、そのために男性と同じ訓練を受けます。

もう1つは、「妻子の共有」と「私有財産の廃止」という構想です。こちらは、共産主義の徹底化といえるかもしれません。現在の私たちの社会では、いずれも実現していないのですが、これを目標にすべきかどうかは議論(あるいは非難)されてきました。

ただ、ここでスローガンだけ述べても、具体的なことは分かりにくいかもしれません。ぜひともプラトンの著作にあたってみてください。思わぬ発見をすること、請け合いです。

(出所:『知を深めて力にする 哲学で考える10の言葉』より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

ホッブズの提示した「リヴァイアサン」という概念

プラトンの『国家』に匹敵する、近代の著作は何でしょうか。こう問えば、多くの人がトマス・ホッブズの『リヴァイアサン』を挙げるでしょう。

ホッブズが活動した17世紀のイギリスについて、あらかじめ確認しておくと、一般的に「戦争と内乱の世紀」と呼ばれています。

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