「国家の役割」を最小化すると最後はどうなるのか 保護されるのは「人身と所有に対する権利」だけ

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こうして成立した「リヴァイアサン」は、ホッブズによれば、「自然人を保護し防衛する」ことになっていますが、巨大化した怪物がどうやって人間を保護してくれるのか、謎は残されたままです。

(出所:『知を深めて力にする 哲学で考える10の言葉』より)

ノージックの提唱した大胆な「最小国家論」

ホッブズが構想した国家は、海の怪物のような巨大な力をもつものでした。本来は個々人の権利を守るために、いったんはその権利を放棄し国家を形成するというのは、社会契約論と呼ばれます。

ところが、その結果として巨大な国家がどのように人々を保護するのか―この問いには、満足のいく答えが与えられないままです。だとすれば、国家そのものを強大化させず、むしろ最小国家にしたらどうか、という発想も可能でしょう。

これを大胆に提唱したのが、現代アメリカのノージックでした。リバタリアンであるノージックは、『アナーキー・国家・ユートピア』の序において次のように語っています。

国家についての本書の主な結論は次の諸点にある。暴力・盗み・詐欺からの保護、契約の執行などに限定される最小国家は正当と見なされる。それ以上の拡張国家はすべて、特定のことを行なうよう強制されないという人々の権利を侵害し、不当であると見なされる。最小国家は、正当であると同時に魅力的である。ここには、注目されてしかるべき二つの主張が含意されている。すなわち、国家は、市民に他者を扶助させることを目的として、また人々の活動を彼ら自身の幸福(good)や保護のために禁止することを目的として、その強制装置を使用することができない。(『アナーキー・国家・ユートピア』)

ここで提唱されている「最小国家」を理解するには、一般的に「国家」がどんな役割をしているか、押さえておかなくてはなりません。

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