原発危機と「東大話法」 傍観者の論理・欺瞞の言語 安冨歩著 ~立場に合わせた都合いい思考に問題あり
評者 奥村 宏 会社学研究家
東京電力の原発事故をめぐり沢山の本がでている中で、この本は実にユニークである。
いわゆる「原子力ムラ」に群がる東大教授たちは事故が起こった後も変わらず原発擁護の姿勢を貫いているが、それは「自己の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する」という知的権威の「東大話法」によるものだ、と著者はいう。
それはたとえば東大工学部の「震災後の工学は何をめざすのか」という文書にも表れ、東大工学部の学者たちに共通して、その態度がみられるようだ。
しかも東大教授たちだけでなく、精神科医の香山リカ氏や元NHKディレクターの池田信夫氏の発言などにも、この「東大話法」がみられるとして詳しく分析している。
現職の東大教授である著者がこのように激しく「東大話法」を批判していることに驚く読者もいるかもしれない。著者は京都大学を卒業して住友銀行に就職したあと、嫌になって辞め、大学院で勉強し直したという異色の人だ。それだけ、内からの厳しい東大批判にも説得力がある。
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