エンロン元幹部の入国、日本が拒否した理由 凶悪犯でもないのになぜなのか
だが講演者が、入管法第5条に定める上陸拒否事由の該当者だと、日本に上陸できない。具体的には、感染症患者や薬物関連の法令違反で刑罰を受けたことがある人などに加え、「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者」が挙げられており、除外対象は政治犯のみ。
ただし同法5条の2で、特例に該当すると法務大臣が認めれば、上陸できる旨が定められている。つまり、上陸を拒否するもしないも、最終的には外務省ではなく法務省が権限を握っているのだ。
さらに、同法施行規則4条の2第1項の2には、ビザに関する外務大臣と法務大臣の協議を経て、特例に該当すると法務大臣が判断すれば、上陸は拒否されないということは書いてある。しかし、特例に該当する場合とはどういう場合なのかについて、裏をかく手口が編み出されることを防止するため、一切明文化されていない。
上陸できた可能性はほぼゼロ
山脇弁護士は、「おそらくファストウ氏は、自分が上陸拒否事由の該当者であるということは理解した上で、特例による上陸許可を狙っていたのでは」とみる。
「今回のケースでは、ACFEジャパンが事前に日本国内の入国管理局に事前相談を持ちかけたかもしれないが、日本の入国管理局としては、とにかく在米日本大使館にビザの申請をしてみろとしか言いようがなかったはず。申請を受け付けた在米日本大使館は法務省との協議次第だと答えるだろうし、法務省は法務省で特例対象については悪用を恐れて明文化もしていないのだから、特例該当性に対する判断を事前に示すはずがない。だが実務運用に照らせば、ファストウ氏に上陸許可が下りる可能性はほぼゼロであることは、協議に持ち込むまでもなく明らかだった」(山脇弁護士)。
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