エンロン元幹部の入国、日本が拒否した理由 凶悪犯でもないのになぜなのか

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上陸拒否には期間も設定されている。単純にオーバーステイ状態になってしまい、自己申告して出国した場合、再上陸できない期間は1年間。強制退去処分を受けた回数が1回だと5年、2回以上だと10年。1年以上の前科者は無期限だ。経済犯であろうと凶悪犯であろうと扱いは同じである。

それでは特例対象とは一体どういうことなのか。山脇弁護士は「基本的に日本人の妻や子がいるなど、血縁関係の理由以外は認められない」という。そのほかは「たとえばオリンピックやワールドカップなどが日本で開催される場合、出場国の公人的立場で来日するような場合に限られる」。

無名の人だったらすり抜けてしまう

海外の大物アーティストが成田まで来て上陸拒否にあうのは、麻薬など過去の犯罪歴が原因であることが多いという。ファストウ氏は世界各国で講演活動を行っており、入国を拒絶した日本は入国基準が厳しいと言える一方で、その厳しい審査をすり抜けてしまうケースも少なくない。

というのも、外国人の海外での犯罪歴を、日本の入国管理局では把握しきれない。ファストウ氏は世界的に有名な人物だったために犯罪歴を把握できた。だが日本は諸外国と前科情報の交換を行っていない。ビザ免除国の国籍を持つ無名の外国人の場合、いきなり成田にやってきて観光目的だと申告すれば、簡単に入国出来てしまう。

いずれにしても、今回ファストウ氏の来日が叶わなかったことは、我々日本人にとって損失だったことは間違いない。制度の裏をかいて入国を試みる悪質な外国人が多いことを前提とするにしても、現行制度はあまりにもわかりにくい。もう少し透明性を確保したうえで、柔軟な制度運用ができる余地もあるはずだ。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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