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中国の急速な軍事的台頭を背景に、日本、とりわけ沖縄を中心とする南西諸島では安全保障上の緊迫度が増している。
その深刻さは、2025年2月7日に行われた石破茂首相とドナルド・トランプ大統領による日米首脳会談の共同声明には、日米同盟強化の取り組みの1つとして「日本の南西諸島における2国間のプレゼンスの向上」が初めて明記されたことでもうかがえる。
筆者は2025年2月中旬、公益財団法人フォーリン・プレスセンターのプレスツアーの一員として、航空自衛隊那覇基地と海上自衛隊那覇航空基地、そして日本最西端の“国境の島”与那国島を取材した。
アメリカやフランス、ドイツ、シンガポールなどのメディア11社から12人が参加した。 1泊2日の急ぎ足の取材でも十分に認識することができたのが、台湾有事や尖閣有事を念頭に置いた、国防最前線の与那国町における町民の安全確保の取り組みと防衛力強化だ。
まずは南西地域の情勢に詳しくない読者もいると思われるので、概況をみてみたい。
空自那覇基地・南西諸島地域の空の砦
本州の長さに匹敵する全長約1200キロメートルの南西諸島地域の「空の砦」となっているのが、空自の那覇基地だ。防衛省は2017年、同基地に司令部がある南西航空混成団を南西航空方面隊に格上げし、日本の南の防空体制の強化を進めてきた。
空自には同方面隊を含め、北部航空方面隊(司令部・三沢基地)、中部航空方面隊(同・入間基地)、西部航空方面隊(同・春日基地)の4つの航空方面隊がある。
驚くのは、南西航空方面隊が担う空域の広さだ。ほぼ東西に約920キロメートル、南北に約780キロメートルに及ぶ広大な空をカバーしている。
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