「台湾有事」最前線の島・与那国で高まる自衛隊依存 中国軍の日本近海での行動で緊迫度増す南西諸島

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一方で、こうした沖縄本島での歴史的な中国への親近感は、約500キロメートル離れた与那国島では一変する。

与那国町漁業協同組合の嵩西茂則組合長は筆者の取材に対し、「中国への親近感はまったくない」ときっぱりと語った。

「中国への親近感はまったくない」

嵩西氏のこの感情は、わからないでもない。同組合は、中国軍が台湾周辺で軍事演習を行うたびに操業の自粛のほか、漁に出ている漁業者を含む組合員に警戒を呼びかけてきた。

「中国への親近感はまったくない」。与那国町漁業協同組合の嵩西茂則組合長(写真・高橋浩祐)

もともと日本最西端の地にある与那国島や尖閣諸島周辺海域は、古くからカジキやマグロなどの回遊魚が豊富な好漁場として知られてきた。しかし2022年8月にアメリカのペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問し、これに対して中国軍が9発の弾道ミサイルを発射、このうち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。

ミサイル落下地点の中で、日本領土に最も近いものは与那国島から約80キロメートルだった。2024年版防衛白書は「このことは、わが国の安全保障と国民の安全にかかわる重大な問題であり、地域住民に脅威と受け止められた」と指摘している。

また、日本政府が尖閣3島を取得した2012年以降、中国公船が同海域で領海侵入を繰り返し、日本漁船への追跡を行うようになったことから、地元漁業者の多くは安全面でのリスクを考慮し、尖閣周辺での操業も敬遠している。

与那国島は、台湾から約110キロメートルに位置する日本最西端の島だ。日本本土のほうがはるかに遠い。親日的な台湾への近さが、与那国町民の反中感情を抱かせている。

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