町の人口は1695人(2025年1月末時点)で、うち約2割を自衛隊員とその家族が占めるに至っている。コンビニエンスストアが今も1つもないこの小さな島では、自衛隊関係者の票が多くなればなるほど、町長や町議らに政治的な影響を与える。かつて町を二分していた自衛隊誘致が加速し、基地依存の島と化しているのも現実だ。
2016年に開設した陸上自衛隊与那国駐屯地は当初は沿岸監視隊だけだった。その後、空自第53警戒隊与那国分遣班と陸自電子戦部隊が入り、陸自地対空ミサイル部隊の配備も決まった。ミサイル部隊が配備されると、自衛隊員とその家族は人口の4人に1人以上になるとみられる。
与那国町長「避難シェルター造成は厳しい」
与那国町の糸数健一町長は「防衛力強化は抑止力の向上につながる」との考えから、ミサイル部隊配備計画を容認した。このほか、築50年以上が経過して老朽化が目立つ町役場庁舎を建て替え、有事の際に住民らが一時的に避難できる地下シェルターを持つ新庁舎を建設する。

町民の島外避難体制を確立するための現在2000メートルの与那国空港滑走路の延伸や新たな港湾の整備なども政府に要望してきた。町は2023年、国民保護法に基づく武力攻撃事態を想定した島外への「避難実施要領」を公表した。
「台湾有事に備え、九州などに避難する計画の策定も大事だが、スイスのような避難シェルターをもっと作ることに注力すべきではないか」。外国メディアがこう尋ねると、糸数町長は台湾危機がよく指摘される2027年をメドに財政的にも時間的にも各家庭などに地下シェルターを設置することは極めて難しいと述べた。
このため、沖縄県外への退避が現実的に先島諸島(南西諸島に属する琉球諸島のうち、南西部に位置する宮古列島・八重山列島)の自治体にとって、実現可能な台湾有事対応策となっている。こうした地元事情は、本土ではなかなか理解されていない。
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