認知症予防効果が期待される「ダイエット薬」 認知症、呼吸器、循環器病を予防する効果も?
GLP-1作動薬は、心臓や腎臓など、さまざまな病気のリスクを下げる効果が報告されている。最近では、アメリカ退役軍人の医療記録を用いた研究で、GLP-1作動薬には認知症の予防効果がありそうだ、とするこれまでの研究を裏付けるようなデータが明らかになり、2025年1月20日付のnature medicine誌に発表されている。医療界では、もはや糖尿病や肥満治療薬として、だけでなくさまざまな疾病の治療薬として期待されている。
nature medicine誌の報告によると、GLP-1作動薬を使うことによってリスクの減少した病気は多岐にわたる。
呼吸器疾患では誤嚥性肺炎、呼吸不全、慢性閉塞性肺疾患、肺炎、胸水貯留など。消化器疾患では肝不全、肝細胞がん、炎症性腸疾患など。精神神経疾患では過食、統合失調症、希死念慮、パーソナリティ障害、てんかん、覚醒剤依存症、麻薬依存症、アルコール依存症、認知症など。
循環器疾患では心筋梗塞、急性肺塞栓症、心停止、肺高血圧症、慢性血栓性静脈炎、出血性脳梗塞などの減少効果が観察されている。もちろん、これは単なる観察結果であり、これらの病気を減らす効果があるのかはそれぞれ臨床試験をして確認しなければならない。ただし、複数の観察研究で同様の効果が報告されており、かなり有望であることには間違いがない。
リスクを増す疾患もある
一方、nature medicine誌の研究では、GLP-1作動薬によりリスクを増す疾患もあることが記載されている。消化器疾患としては吐き気、嘔吐、逆流性食道炎、胃腸炎、腹痛、結腸憩室、結腸憩室炎、急性膵炎など。腎泌尿器疾患では腎結石症、精神神経疾患では睡眠障害、循環器疾患では低血圧症のリスクを増す可能性がある。
GLP-1作動薬は消化管の消化活動をゆっくりにする働きがあるため、いつまでも食べたものが胃の中に滞留する。それにより人によっては胃酸が逆流して胸焼けが起きたり、便秘になる。人によっては嘔吐することもあるし、長引く便秘は結腸(いわゆる大腸)に憩室という病気を引き起こす。低血圧症はデメリットかもしれないが、高血圧症の人にとってはメリットと言えるかもしれない。
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