「そろそろ地に足がついた生活をしなくちゃと思ったんです。地元で事務の仕事を見つけて一人暮らしを始めました。安月給だったので、週に3回はクラブでホステスをしましたがまったく向いていなかったです。私はお世辞を言うのが苦手だし、女(の面)を出すような仕事はできません」
と言いつつ、恋人は割とすぐにできると明かす聖子さん。お店の客に13歳年上の経営者がいて、惚れ込んで付き合ったものの数カ月で別れてしまった。原因はやはり聖子さんの嫉妬深さである。
「彼が他の女性と話しているだけで嫌な気分になりました。それでケンカをしてLINEをブロックされて、2年間ぐらいは引きずっていました」
はじめは夫のアプローチから始まったのだが…
その頃に男友達を通じて知り合ったのが当時28歳だった圭一さんである。圭一さんは聖子さんに一目惚れをしたらしい。誘われて、食事やドライブに何度か行った。でも、圭一さんは人当たりはいいけれど子どもっぽい気がして好きにはなれなかった。聖子さんは甘えられるよりも甘えたいほうで、前の彼のことも忘れられなかったのだ。
「前の彼のことはそのうちにさすがにあきらめて、別の人と付き合っていました。夫(圭一さん)からはときどきLINEでメッセージが来ましたが、返したことは7年間でほとんどありません」
いまでは「24時間監視したい」と執着している割には冷たい仕打ちだが、人間は弱ったときに手を差し伸べてくれる人に心惹かれたりする。聖子さんの場合は重度のぎっくり腰だった。
「あまりに痛くて3カ月間はほとんど歩けませんでした。家で寝ているだけなのでめちゃ暇です。そんなときに夫から『久しぶり~、元気?』とメッセージが来たので、思わず返していました。『何? 何の用?』というぐらいですけど。変な勧誘をされるのかと疑っていたからです」
嫉妬深いだけでなく疑り深い人でもある。圭一さんのほうはめげずにメッセージをくれ、聖子さんの腰を本気で心配してくれた。その誠意と優しさは聖子さんにもようやく響き、「あれから7年も経っているからどんな男に成長しているのかな」というやや上から目線の興味を引き出した。
再会してみると、建設現場で働いている圭一さんは人当たりの良さはそのままに落ち着きのある「いい感じの大人の男」に変貌していた。今度は聖子さんが惚れ込む番だった。ただし、41歳になっていた聖子さんは、圭一さんから告白されたときに「結婚が前提なら付き合ってもいいよ」と釘を刺すことを忘れなかった。
「その頃には姉も妹も同級生もみんな結婚していたからです。考えが浅いかもしれませんが、結婚指輪をしている人がすごく羨ましくなっていました。まったく知らない女性をスーパーで見かけても結婚指輪をしていると引け目を感じたり。あの空気感とステータスが欲しかったんです」
やや軽薄な結婚動機を恥ずかしそうに語る聖子さん。結婚後は、圭一さんの実家に親抜きで2人暮らしをしている。
「3DKの一軒家なので、自分一人には広すぎると言って義母が譲ってくれました。義母が一人暮らしをしているアパートの家賃は私たち夫婦が払っています」
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