観閲式に音楽祭…自衛隊のイベントは必要か 隊員にかなりの負担、本来業務に多大な支障も

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とくに戦闘機の騒音は困りものだ。基地内の地下室でも会話の妨げとなるぐらい大きい。哨戒機や輸送機しかいない基地の近隣住民にとっては厄介な騒音でしかない。

しかも、住民のほとんどは飛行機に興味はない。自衛隊や飛行機が好きだから飛行場の近くに住んでいるわけではない。基地公開にもあまり行かないし、飛行展示があってもほとんどは喜ばない。ブルーインパルスの曲芸飛行にも、ほぼ無関心である。

海空自の航空部隊はサービス精神の発揮先を誤っている。飛行展示などで喜ぶのは地元ではない。遠方から巨大なカメラや撮影用の脚立を持ってくる飛行機や模型のマニアだ。そうであるために、むしろ近隣住民に渋滞や騒音といった迷惑を強いている。

行事は愛好家のためではない

これは本来の趣旨に戻る必要があるのではないか。すなわち、航空基地公開は地味にしたほうがよい。基地の塀の中で何をしているかを知ってもらう行事にとどめる。

そして愛好家が押し寄せないように外来機や飛行展示はしない。あるいは入場者は近隣市町村の住民にとどめるといった工夫もありえる。

隊員の募集効果を望むにしても、年齢制限や招待制を考えるべきである。実物展示は集客効果が高い。とくに将来の募集対象となる小中学生の興味を惹く。ただ、あくまでそれは募集のためであって、マニアを歓待するためではない。

もちろん、すべての行事について一律に見直せというわけではない。必須の行事は省略はできない。皇室行事を筆頭とする国家行事への不参加はありえない。自衛隊は事実上の“国軍”であり、参加しないとなれば国家行事として成立しがたい。

順調で妥当な行事も見直す必要はない。必要性、効果、負担の観点からみて良好な行事も少なくない。海自の観艦式や、今は一般公開を取りやめているが陸自による総合火力演習の広報効果は高く負担は小さい。飛行場以外であれば基地の一般公開もさほどの負担ではなく、周辺の迷惑ともならない。

また、地方巡回は推進すべき行事である。各地への艦艇入港は低負担で国内向けのプレゼンスを実現している。

中でも離島の漁港に掃海艦艇が入港するというものは、「災害時にも見捨てない」との島民に向けたメッセージとなっている。

同じように、災害時救援の主力となる陸海空のヘリコプターも訓練を兼ねて各地を回るべきだろう。災害時に想定展開拠点となる運動場や公園への展開と展示といった形で実施してはどうか。

文谷 数重 軍事ライター

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もんたに すうちょう / Sucho Montani

1973年埼玉県生まれ。1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。ライターとして『軍事研究』、『丸』等に軍事、技術、歴史といった分野で活動

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