観客入場の抽選倍率も広報の効果あるという証明にはならない。自衛隊は「倍率6倍の人気行事」と宣伝しているが、それはキャパ1万人の武道館に3000人ずつしか入れないので倍率が上がっただけである。
筆者の体験でも今ひとつである。自衛隊工事の御用聞きで関係先にはあいさつ代わりに広報行事の案内や手配もしていた。そこで(それなりではあるが)人気があったのは、観艦式や富士火力演習のチケット、南極の氷の配布だった。
これらは自衛隊と利害が必ずしも一致せず、率直に意見を交わす関係の団体からも手配を頼まれた。ただ、音楽まつりのチケットがほしいと言われたことは一度もなかったのである。
観閲式も今のままでよいのか
隊員への負担は無視できない。演者は陸海空の音楽隊だけではない。一般隊員からも太鼓の要員として100人以上をかき集めている。しかも彼らは専従である。1年単位で訓練などの日常業務から離れて太鼓の練習をしている。金銭面でも、武道館の利用料金が発生する。
結局、続ける理由がない。確かに陸海空音楽隊員の交流は必要だろう。ただ、それは音楽隊限りでやればよい。自衛隊の行事として続ける必要はない。
中央観閲式も見直す必要がある。必要性は高いが効果は限定的であり、負担も大きい。観閲式とは内閣総理大臣による陸海空自衛隊の閲兵である。最近では埼玉県の朝霞駐屯地で3年に一度実施している。
この行事の必要性は十分にある。自衛隊の最高指揮官は文民であり、自衛隊は文民政府に隷属する。それを明示する行事だからだ。また外国向けには世界有数の軍事力を誇示する機会であり、国民に向けても防衛政策や募集のよい広報となっている。
ただし、効果は限定的でもある。演習場の塀の内側で実施するため露出は少ない。防衛省関係者と各国武官、限られた数の国民が見るだけになっている。
さらに、負担が極めて大きい。現地予行を含めれば5万人日を消費している。陸海空の参加隊員数は4000人を超えており、実施の10日前には朝霞に集合して予行を繰り返し本番に当たる。その際には人員輸送や宿泊、給食を支援する隊員も必要になる。
加えて、参加部隊は1~2カ月前から所在地で事前練習もやっている。整列と行進の能力向上といった実務上は無益な訓練に力を入れるのだ。
海自の参加部隊であれば、午後はすべて訓練である。整列と「軍艦マーチ」を何回も繰り返す。任務に影響が出ないようにと、千葉県柏市にある第3術科学校に入校中の自衛官を参加者に仕立てているものの、期間中は本来の教育は進まない状態になる。
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