観閲式に音楽祭…自衛隊のイベントは必要か 隊員にかなりの負担、本来業務に多大な支障も

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これら行事の負担は大きい。動員規模は1000人を超えることは珍しくない。拘束期間もむやみに長い。自衛隊は失敗を病的に嫌うため、事前訓練や予行を何回も実施するからである。

ただし、こうした行事の開催負担は、これまでは問題とはならなかった。自衛隊に余裕があったためだ。

自衛隊は2000年ごろまでは、今から見ればヒマを持て余していた。冷戦時代も例外ではない。ソ連と対峙していたものの、自衛隊の業務量はたいしたものではなかった。

冷戦後に始まる海外派遣も常態化はしていない。湾岸戦争(1990~1991年)後に行われた機雷処分やカンボジアPKO(国連平和維持活動)はあくまでも一過性の出来事にすぎない。

対中国、北朝鮮…本来の業務が格段に増えた

隊員数も不足はなかった。以前には予算上の定数はおおむね満たしていた。確かに好景気となると隊員募集は厳しくなった。ただ、若者の数が多い時代であり、採用水準の実質的切り下げで人数のつじつまを合わせていた。

しかし、今では行事と任務の並行実施は難しくなっている。

まず、仕事が増えた。中国軍の活動は積極的であり、かつてのソ連とは比べものにならないほどだ。並行して北朝鮮が発射する弾道弾への監視も続けなければならない。

中東・アデン湾をはじめとする海外派遣や日米間と、さらにはオーストラリアやヨーロッパとの共同訓練も日常化している。

人員も減った。人口減少から隊員募集は年々厳しくなっている。今の人員規模の維持はすでに不可能だ。加えて、部隊から人もいなくなっている。自衛隊強化の名目で、高級司令部や機関を増設し、そこから隊員を引き抜かれたためだ。

そのため行事と任務が衝突する事態も生じている。2024年1月1日に発生した能登半島地震での災害派遣は、自衛隊行事の影響を受けた。

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