吉野家「出店数激減?」に見る牛丼チェーンの変化 店舗数は頭打ち、早急に求められる新たな鉱脈

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また、昨年12月には「カレー専門店 もう〜とりこ」をオープン。この「とりこ」シリーズとしては、「牛かるび丼・スンドゥブ専門店 かるびのとりこ」もオープンさせている。

さらに、それとほぼ同時にからあげの新業態「から揚げ専門店 でいから」も開店した。 

これだけ書くと、この短い期間の間にずいぶんと多くの店舗を出店したんだなあ、と思わずにはいられないが、これに加えて昨年は吉野家内で「ダチョウ肉」を使った「オーストリッチ丼」の提供も試験的に導入。

吉野家によれば、ダチョウ事業も「新しい柱」として本格化させる狙いだという。 

「伝統」の吉野家だからこそ、動き出しが遅かった? 

ただ、これらの店舗が長期的に見てその利益に向上するかは難しいところだ。 

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例えば「もう〜とりこ」を視察したフードスタジアム編集長の大関まなみ氏は同店舗が「誰を向いているのかわからない」と書く。

店舗の構造としては若い女性を狙っているのだろうが、結局中にいるのは地元の男性が多く、吉野家の目指したい方向と現実の吉野家のあり方が乖離しているのだ(吉野家の跡地に出現「おしゃれカレー店」の実態 新業態を直撃!味のクオリティは申し分なしも…)。 

吉野家は「牛丼一筋」で長い歴史を紡いできた。だからこそ、こうした動き出しへの変化が遅れてしまったのかもしれない。

そのためだろうか、こうした積極的な新業態の開発を見ていると、どこか「焦りの色」が見え隠れする。 

しかし、その焦りは結果的に見れば、拙速な新業態の開発につながってしまい、最悪本業の牛丼までをも切迫しかねない。というよりも、今回の「出店数半減」報道には、こうした吉野家の焦りとその結果がよく現れているのではないか……筆者には、そんなふうに思えてしまうのである。 

戦後、急増するソロ男性たちをターゲットにして大きくシェアを広げた牛丼屋。しかし、牛丼が初期にその顧客としていた独身男性だけでは、これ以上の成長は望めない。とはいえ、すき家のように初期からファミリー向けを狙っていなければ、突然ファミリー向けや女性向けに店のイメージを変更するのも難しい。 

吉野家が置かれているポジションは、予想以上に厳しいのかもしれない。ファンのひとりとして、その奮闘を今後もウォッチしていきたい所存だ。 

【もっと読む】牛丼チェーン「深夜料金」に不満の声が続出する訳 外食チェーンのインフラ化に我々は慣れてしまった では、牛丼チェーン各社が導入を進めている深夜料金に不満の声が続出している理由について、チェーンストア研究家の谷頭和希氏が詳細に解説している。
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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