「会社員のスキル=企業のもの」が時代錯誤の訳 会社が提供した能力・スキルは…誰のもの?

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(会社にとって、人は)資産なのか、資本なのか。実は重要なポイントです。企業のバランスシートで言えば、資産(アセット)は左側にくるもので、資本(キャピタル)は右側にくるもの。例えば、株主が投資してくれたお金は資本で、借り物です。借り物を元手にビジネスを行うことで左側の資産が生まれ、企業の持ち物になります。ですから、従業員を資本(借り物)として大切にするのか、資産(持ち物)として大切にするのかで、意味が大きく異なってきます。

すなわち、人的「資本」経営なのか、人的「資産」経営なのか、この違いを踏まえることが大切だということです。

改めて問います。「資本」とは何でしょうか。それは「利益を出すための元手」を指します。

資本は、株主などから調達するものです。それは、いわば「借りもの」とも表現できるでしょう。ほかから借りて、それを元手に経営をするわけです。

他人から「借りているもの」ですから、資本についてはもちろん、企業側の思いどおりにすべてをコントロールしていいということにはなりません

一方の「資産」は、「金銭的な価値があり、換金可能な財産全体」のことを指します。こちらは企業の「持ちもの」と言えるでしょう。

経営とは、「借りもののお金(=資本)」をもとに「企業の持ちものとなる財産(=資産)」を増やすこと、と言い換えることができます。

そんな経営において、人材をどう位置づけるべきでしょうか。

企業は「個人からスキルを借りる」という考え方

人材は「借りもの」とすべきか「持ちもの」とすべきか。

これからは「借りもの」とすべきだというのが私の主張です。

人的資本、つまり個人のスキルやノウハウ、能力は、個人から企業が「借りているもの」だと考える。

借りものですから、やはり、それをすべて企業側の思いどおりにしていいということにはなりません。活用するには、より大きな責任をともないます。

その一方で、活用次第で大きなリターンが得られる可能性も大いにあります。

これまでの日本企業の多くは、会社の都合で、会社の意向に沿うように人材を育て、育った能力を事業のために使ってきました。

ですが、これからは、そのような「個人の能力を『会社の意図に沿って』成長させる」経営から、「『個人の意思に沿って』成長を続ける個人の能力を会社が借りる」経営へとシフトすることが求められているのです。

田中 弦 Unipos株式会社代表取締役会長

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たなか・ゆづる / Yuzuru Tanaka

Unipos株式会社代表取締役会長。
1976年生まれ、北海道出身。1999年ソフトバンクのインターネット部門採用第1期生としてインターネット産業黎明期を経験。その後ネットイヤーグループ、コーポレイトディレクションを経て、2005年ネットエイジグループ(現ユナイテッド)執行役員。
現在は、国内外5000社以上の人的資本開示を読み込んだ「人的資本経営専門家」としても活動。
Unipos株式会社の前身であるFringe81株式会社(2017年東証マザーズ上場)の創業者であり、上場企業経営者として自社の人的資本経営に取り組んでいる。経営者としての実体験や、多数のクライアント事例、膨大な開示事例から導き出した、経営戦略と人事戦略を紐づけるための「人的資本経営フレームワーク(田中弦モデル)」を考案。
「10年後に日本は変わった、とみんなで乾杯しましょう」を合言葉に、精力的に日本企業の変革を推進する。
著書に『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』(ダイヤモンド社)がある。

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