与野党の支持率が拮抗する中で、民進党政権が得意分野の外交・安全保障で失点すれば野党有利の流れが出るかもしれない。民進党は2016年から政権を担っている。長期政権への飽きや警戒もある中、同党への逆風は強まりやすい。
2028年の総統選挙では2期目を目指す現職の頼清徳氏に対して、国民党からは台中市の女性市長・盧秀燕(ろ・しゅうえん)氏が出馬すると予想される。頼政権の支持率は5割前後と歴代総統の中でも高水準を保つが、盧氏も高い人気をもつ。接戦になる可能性は高く、地方選挙や立法委員の選挙区選挙では接戦時に女性候補が勝つ傾向が強かった。
2030年代は国民党政権のもと緊張か?
2030年代に入れば、国民党はホープとして育ててきた蔣万安・台北市長をいよいよ総統選に投入するだろう。蔣介石のひ孫として知られ、端正な顔立ちも相まって、人気はある。民進党で同様のホープが今後育つかは課題であり、半世紀近くぶりに蔣家の者が中華民国総統になる可能性は十分ある。
2030年代を確実に見通すのは難しく、実際にどうなるかはわからない。ただ、はっきりしていることは2つある。
中国は台湾統一(併合)を狙って軍拡を続けること、そして台湾社会では台湾の主体性を重視する台湾アイデンティティーが定着し、中国との統一を決して望まない民意がより確固となることだ。
中国との融和を主張してきた国民党には、傅崐萁氏のように台湾の有権者ではなく中国の官営メディアにどう評価されるかばかりを気にしているかのようなベテラン政治家が今なお存在する。しかし、国民党が本気で政権返り咲きを目指すならば世代交代を進めて台湾社会の多数派の民意を納得させて取り込まなければならない。
その民意とは、中国とこれ以上関係を悪化させて戦争もしたくないが、統一もされたくないという「現状維持」である。
仮に融和を掲げる国民党が政権に返り咲けば、中国との緊張は一時的に緩和するだろう。しかし、融和に走りすぎれば台湾社会で中国統一への警戒感が生まれ、反発も広がりかねない。それが今の台湾の多数派の民意だ。
そうなると中国は、国民党政権であっても平和統一の可能性はないと判断するかもしれない。そうなれば、武力を用いて統一を強制するしかなく、中国の軍事的圧力がかえって強まる可能性がある。
2030年代の台湾で政権を担うトップは2020年代以上に厳しい安全保障環境にさらされそうだ。その人物が、かつて中国共産党と対峙していた蔣家の子孫になるかもしれない。歴史は韻を踏む。ただし、それはかつてのような独裁ではなく台湾の民意に基づいてである。
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