トランプで台湾は2030年代に向けて野党に傾くか 支持率拮抗でチキンレースに陥る台湾の与野党

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相手を攻撃し続けてコアな支持者を引き付けておきつつ、相手側で不祥事などが起きて隙を見せたときに自党有利の社会的な流れを作り出し、3割弱の無党派層を誘い込もうという戦略である。

2026年以降に迎える統一地方選挙や総統選挙に備えて党勢の維持・拡大を考えれば、妥協せず対峙しあうことは政治戦略として間違っていない。

ただ、その結果として台湾が本来進めるべき政策に支障が出るのは確実で、割を食うのは台湾社会とその未来である。

影響が最も懸念されるのは、中国が圧力を強めている最中にあるので、やはり外交・安全保障分野で、影響は民進党政権の行方も左右しかねない。

台湾内政にトランプ大統領の台湾軽視が影響

台湾の安全保障に最も関与しているアメリカでは、1月20日に第2次トランプ政権が始まった。トランプ氏はかねて台湾を「ペンの先っぽ程度」と軽視したり、「半導体ビジネスを盗まれた」と不満げに見たりする発言を繰り返してきた。

第1次トランプ政権では中国をライバル視し始めたことから台湾重視の姿勢が鮮明だった。第2次政権でもルビオ国務長官など対中強硬派が並ぶ一方で、就任式に中国の首脳クラスを招いたほか、対中追加関税の即時発動見送りなど中国と駆け引きする姿勢が濃厚だ。台湾では自分たちが米中間の取引材料として最終的に見捨てられるとの疑念が一部で広がる。

同盟国との連携にも否定的なアメリカ第一主義のトランプ政権の歓心を買う方法としてたびたび話題に上るのが、武器購入やアメリカ軍の負担軽減などわかりやすいメリットを提示することだ。

トランプ氏はNATO(北大西洋条約機構)加盟の各国に対して、防衛費をGDP(国内総生産)比5%へ引き上げるべきとの考えを公言している。台湾に対しても同様で、トランプ政権で国防次官に就任したエルブリッジ・コルビー氏は、現在GDP比2.5%の台湾の防衛支出を10%に引き上げ、最低でも5%にせよと主張をしてきた。

台湾の頼清徳政権は早くもアメリカからの大量の武器購入検討を表明するなど先手を打っている。しかし、残念ながら台湾に内政上の余裕がないことが、予算審議などで改めて露呈した。武器購入を野党に妨害される可能性はある。

アメリカの姿勢は台湾の有権者の選択にも影響する。バイデン政権のように民主主義や自由という価値観でアメリカが台湾を支持してくれるかは、もはや定かでない。野党側が頼政権の足を引っ張り、台湾が対米関係につまずけば、これまで外交や安全保障分野で支持を得てきた与党・民進党にとっては打撃になる。

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