選択と集中を否定、弁護士経営者の「異端の思考」 ミネベアミツミCEO・貝沼由久氏の軌跡【前編】
部品のユニクロ――。取り扱う製品の幅広さから、精密・電子部品メーカーのミネベアミツミはそう例えられる。祖業の小径ベアリングに始まり、モーターやアナログ半導体、自動車部品など、現在のコア事業は計8分野。特定の領域にリソースを注ぎ込む「選択と集中」が企業戦略のセオリーとされる中、会長CEOの貝沼由久は、これを真っ向から否定する。
「経営の本質はサステナビリティー(持続性)であり、多角化は究極のリスクマネジメント。この分野がダメな時は、ほかの製品が助けてくれる。そういうバランスが、株主や従業員を守る意味でも重要だ」
貝沼が今日までに自ら手掛けたM&Aは約30件。そのすべてを黒字化し、事業領域を広げてきた。保有する製品や技術同士の掛け合わせで、新たな付加価値を生み出す「相合(そうごう)」戦略を掲げ、2024年度の連結売上高は1兆5600億円、営業利益で1030億円と過去最高水準を見込む。2009年に社長職へ就いた時から前者は6倍超、後者は約8倍となる。
「買収王」と呼ばれた義父との出会い
世界シェア首位の小径ベアリングで稼いだ利益を、ほかの不採算事業が食い潰す。貝沼が社長になったころ、ミネベア(当時はミツミ電機との統合前)はそんな会社だった。ゆえに、多角化路線を打ち出すと、株主や投資家には「ガッカリした。軸受け以外はもうやめろ」と反発された。それでも「世界唯一の『相合』部品メーカーを目指す」との考えを曲げなかった。
いかにして信念を貫き、躍進を実現させたか。その軌跡を振り返るには、最初にミネベアの「中興の祖」である義父・高橋高見との関係性を語らねばならない。製造業とは別の人生を歩むはずだった貝沼を、現在の道へ導いた「師」とも呼べる存在だからだ。
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