ミネベアミツミの貝沼由久会長兼CEOは、積極的な買収で業績を拡大してきた。社長となった2009年から現在までに約30件のM&Aを手がけ、そのすべてを黒字化。主軸だったベアリングとモーターに加え、アナログ半導体や自動車部品など、現在は8つのコア事業を抱える。どのように多角化を進めてきたのか。
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よどみなく進んでいた足が、とある装置の前でぴたりと止まった。
「ここは何でこんなに遅いの」
9月中旬、ミネベアミツミのタイ最大拠点であるバンパイン工場。視察中の貝沼氏は、こう鋭く短く問いかけ、神妙な面持ちの工員2人を傍らに呼び寄せた。ガラス張りのアルミフレーム内を、のぞき込みながら指さす。
そこは主にEV(電気自動車)の駆動部で用いる、「レゾルバ」というセンサーの生産ラインだった。自動化された工程の中で、運ばれてきた部品に次の加工を施すまでに、ほんの数秒の間があったのだ。
「搬送のスピードだけ上げても意味ないでしょう」。その場で何やら指示を出した貝沼氏は、振り返らずに次の予定へと向かった。わずか10分程度の出来事だった。
貝沼氏の視察は「集中治療室」
「絶対に直すんだというメンタリティが大事。切羽詰まった気持ちで見学できるかの勝負なんですよ」
そう語る貝沼氏は、68歳となった今も世界各地の生産拠点を月1回は訪れる。2023年4月に社長を腹心の吉田勝彦氏に譲って以来、その頻度は減ったというものの、現場を最重要視する姿勢は変わらない。
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