貧困で「わずか13歳の少年」が売買される国の事情 日本の野球ファンは知らない、ドミニカ野球の現実

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前述したように、メジャーの下部組織を目指すアカデミーは千差万別であり、そこの経済状況はそれぞれによって大きく異なっている。

若ければ若いほど契約金が高くなる可能性がある一方で、成長が遅い選手は、アカデミーにとっても負担になる。1人ひとりにかかる食費など生活コストを賄わなければならないからだ。限られたリソースしか割くことができない零細コミュニティにとって、それはもはや「負債」なのだ。

だからこそ、「売れる時に売る」という意味でも、選手の移籍(売買)はアカデミーにとって重要になってくるし、しっかりとしたアカデミーほど、「損切り」という感覚を持っている。

損切りされた若者たちのその後の人生

実際に、このリアルを私は身近な所で体感した。

帰国後に、私の所属していたアカデミーの練習風景をSNSを通じて見た。同じ時期にトレーニングをしていた16歳前後の選手たちの複数人が、すでにいなくなっていたことに気づいた。

アカデミーの方に彼らの行方について尋ねたところ、1人は進捗が遅いから他に送ったという連絡を受けた。

また、もう1人の選手は、もともと別のアカデミーから買ったと聞いていた選手だった。その選手はメジャーの下部組織を目指すアカデミーにおいて、2度も“人身売買”されたことになるのだ。

私は売られた選手とSNSで繋がっているため、彼のアカウントを覗いてみた。彼は私と出会った当時に過ごしていたアカデミーでは売られてしまったが、今でもマイナーの下部組織に買われるために夢を追いかけている姿を確認することができた。

彼は何度売られても、相変わらず大きな舞台に立つことを志していたのだ。

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