実際、2024年末までのアメリカ経済はかなり堅調で、2024年の経済成長率は年3%近くに上振れたと試算される。2024年半ばまで、FRBは5.25~5.5%の政策金利を1年間維持して引き締めており、計3回の利下げでこれを少しずつ緩めたわけだが、それでも経済の高成長が実現したことになる。
なぜアメリカでは高金利と経済成長が共存できるのか
現在、市場の一部には、アメリカの長期金利が再び5%まで上昇する可能性が出ているが、筆者は5%超の金利上昇は続かないと予想している。それでも、同国では高金利と経済成長の共存が起きているということだ。
筆者自身は、2023年半ばから一貫して同国経済の先行きには楽観的である。だが、4%以上の政策金利と潜在成長率を超える成長が共存するとまでは想定できず、高金利が経済成長の減速をもたらすと予想していた。だが実際には政策金利が4.5%を超えていた中で、3%の経済成長が続いたのだから、同国経済の巡航速度(潜在成長率、労働生産性)が高まっている可能性は否定できないだろう。
また、趨勢的な労働生産性が高まっているとの説に対して、筆者はやや懐疑的であった。だが、昨年末にはこれが起きているという数的な根拠が増えている。先述の次期トランプ政権による関税政策に加えて、労働生産性が高まっている可能性を考慮したことも、2025年にFRBによる利下げは多くても2回程度にとどまるとした1つの理由である。
同国では、起業件数が2020年のコロナ禍直後に大きく増えた。これは、コロナ禍による生活様式や働き方の変化によって、新たなビジネスが増えたためである。この動きが1年は続くと想定していたが、実際には4年経過した2024年も起業件数はずっと高止まったままで、同年末には再び増える兆しがみられている。コロナ禍の経済ショックを経て、労働者を含めた経済資源が成長産業にスムーズにシフトが続き、経済全体の生産性を高めていることを示している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら