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あまりにも不確実「アメリカ景気と利下げ」の道中 「緩やか利下げ」を示すも判断基準はあいまい

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利下げに転じたFRBは、景気とインフレの減速を「ソフトランディング」させることができるか。

アメリカの株式市場は利下げを受けて史上最高値を更新(写真:Bloomberg)

※本記事は2024年9月27日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

「アメリカをはじめ経済の不透明感が意識されている」。日銀の植田和男総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、金融市場の動向についてこう述べた。日銀の金融政策のみならず世界経済全体を左右するアメリカ経済が転機にある。

FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)は根強いインフレから金利を高止まりさせてきたが、9月、利下げに転じた。その手前では、8月上旬にアメリカの景気後退懸念が高まり、株急落はじめ金融市場が動揺する一幕があった。
FRBが示した今後の利下げペースは。その前提と見通しの実現可能性は。市場はどう受け止めているのか。アメリカ経済を専門とする大和総研の矢作大祐主任研究員に解説してもらった。

――9月にFRBはどう動いたのでしょうか。

1年半弱の利上げ期間(2022年3月~2023年7月)、そして、約1年の据え置き期間(2023年9月~2024年8月)を経て、9月のFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)では、ついに利下げへと舵を切った。さらに、利下げ幅は0.50%ptと大幅なものとなった。

パウエル議長は、大幅利下げを決定した理由について、FOMC後の記者会見で、「後れをとらないようにするためのコミットメント」と述べた。雇用環境、ひいては、景気全体を過度に冷やさないために、FRBが大幅利下げで先手を打った形だ。

ただし、パウエル議長は記者会見で、前回(7月30~31日開催)のFOMCの時点で、7月の雇用統計(8月2日公表、失業率の上昇など雇用の減速を示す内容)が入手できていたら、前回のFOMCでも利下げを実施していたとも話している。

つまり、本来実施すべきであった前回のFOMCでの利下げを補うために、今回の利下げ幅を0.50%ptにしたのかもしれない。

市場の「大幅利下げ期待」に言質を与えなかった

――2024年中の利下げについて、どう示したのでしょうか?

やさく・だいすけ/2012年、大和総研入社。2013~2015年、財務省国際局国際機構課に出向。2016~2017年、中国国務院傘下の中国社会科学院金融研究所に訪問研究員として在籍。2017年に大和総研に帰任し、金融・資本市場調査担当を経て、2019年からニューヨークに駐在。2023年12月に帰任し、現職 (写真:大和総研)

FOMC参加者のFF金利見通し(ドットチャート)の中央値では、2024年末までに、合計0.50%ptの利下げが見込まれている。これは、11月、12月のFOMCでそれぞれ0.25%ptずつの利下げを実施すれば達成できることを意味する。

ただし、ドットチャートの中身を見ると、年内合計0.50%ptよりも小さい利下げ幅(0.25%を1回、あるいは現状で据え置き)を見込むFOMC参加者が19名中9名と、FOMC内でも見方が割れている。

市場参加者は、パウエル議長がさらなる大幅利下げの可能性を示唆するというリップサービスを期待していた。しかし、パウエル議長は、記者会見で、今後の利下げ幅についてはデータ次第というスタンスを維持し、言質を与えなかった。

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