脱炭素が空文化、エネルギー基本計画は課題山積 再エネ低迷、原発と火力の継続が最大の特徴

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以上の通り、今回のエネルギー基本計画案は、気候変動課題の解決のうえでも、エネルギー転換の加速の点でも、課題が大きい。その背景として、決め方の課題も指摘したい。

作成に至るまで、経済産業省・資源エネルギー庁の下では、燃料資源、再エネ、原子力発電、カーボンプライシング、電力市場など多岐にわたるテーマで、数えきれないほどの審議会が開催された。加えて、温室効果ガス排出削減目標を検討する合同委員会や、首相官邸の下のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議も開催され、日頃から政府のエネルギー・気候変動政策を追い続けているわれわれであっても動向をフォローするのは困難であった。

このうち、エネルギー基本計画案の検討の場である、総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会では、下部の委員会で準備された資料に委員が意見を数分述べるだけの形式的な会議が続けられた。周知のことではあるが、審議会は、政府に近い立場の人が多数を占め、政府方針にお墨付きを与える場になっているのが実情である。

同分科会では、最終盤の2024年12月中旬に案が示され、実質的な議論が乏しいまま 翌週には了承された。直後に開催された閣僚級会合もわずか10〜30分で最終案をそのまま了承した。実質的議論も政治的リーダーシップも不在のままでの決定だった。

ここに見られるのは、プロセス全体における経済産業省の大きな力の存在と、審議会で下から積み上げていく政策決定方式における関連業界団体の深い関与である。この構造では、既存の経路に依存した判断が尊重され、大胆な変化が起こりにくく、意思決定の外側にある企業や市民の声も反映されにくい。

しかし、その構造の内側の関係者だけに委ね続けていては、気候変動を防ぐエネルギー転換の実現は図れないことは明白である。そうであるなら、外側にいる主体や個人が関与し、変化を起こすしかない。短い期間だが、1月26日までのパブリックコメントの機会を大いに活用し、積極的に意見を述べたい。

平田 仁子 一般社団法人Climate Integrate 代表理事

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ひらた きみこ / Kimiko Hirata

出版社勤務後、アメリカの環境団体の経験を経て、1998年から2021年までNPO法人気候ネットワークに勤務。国連の気候変動交渉(COP)や気候・エネルギー政策に関する分析や情報発信などで20年以上の経験を有する。2011年の福島第一原子力発電所事故の後には石炭火力発電所の建設計画に対して取り組み、多くの計画を中止に導いたことや、金融機関に対する株主提案などが評価され、2021年「ゴールドマン環境賞」を受賞(日本人3人目、女性初)。2022年には英BBCの「100人の女性」に選出。2022年にClimate Integrateを設立。千葉商科大学大学院客員准教授。市川市環境施策推進参与。聖心女子大学卒業、早稲田大学社会科学研究科博士課程修了(社会科学博士)。主な著書に『気候変動を学ぼう』(合同出版、2023年)

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安井 裕之 一般社団法人Climate Integrate 公共政策ディレクター

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やすい ひろゆき / Hiroyuki Yasui

大学卒業後、丸紅株式会社にて国内外における新規事業投資プロジェクトに係る規制課題の調査・分析、コンプライアンス体制の構築・強化に従事。その後、ルールメイキングの重要性を感じ、2017年に公共政策コンサルティングを専門とするマカイラ株式会社に参画。社会変革につながる新しいビジネス領域を中心に、政策提言や政府・自治体・NPO等との関係構築・連携支援を行う。一般社団法人シェアリングエコノミー協会でも、公共政策部長として、シェアリングエコノミーに関わる制度改革の実現や安心安全な利用環境の整備に向けた提言活動を展開している。2024年、Climate Integrateに参加。京都大学法学部卒業。

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