脱炭素が空文化、エネルギー基本計画は課題山積 再エネ低迷、原発と火力の継続が最大の特徴

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一番の特徴は、今後の原子力と火力の継続利用の方針を出したことだろう。データセンターなどの増加で電力需要が増えることを理由に、供給力強化に必要だとされた。太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)も増やす方向だが、さまざまな制約要件やコストが高くなるといった試算に基づき、伸びについては小さくとどめられた。

その結果、2040年度の電源構成は、再エネ4〜5割、原子力2割、火力3〜4割となっている。再エネは主力電源となりそうだが、伸び率が低位水準にとどまれば、2030年度から2040年度の間、4割程度のまま増えないことになる。

当団体が日本の電力システムの脱炭素化シナリオ作りにおいて協働しているアメリカのローレンス・バークレー国立研究所によるシナリオでは、2035年にも電源構成における再エネ7割の導入が可能だとされている。エネルギー基本計画案における電源構成に占める再エネ比率は、それと比べても異様に小さい。

2024年までに国連の下では「化石燃料からの脱却」や「再生可能エネルギー3倍」に合意し、主要国首脳会議(G7サミット)では「2035年までの電力システムの完全または大宗の脱炭素化」の合意を再確認している。今回の案はこれらの合意とも整合しない。

火力発電は2040年度3~4割を維持

次に、個々の電源の位置付けを見ていこう。

まず、火力発電については、石炭、石油、天然ガス、アンモニアや水素の混焼の内訳が示されず、まとめて2040年度3〜4割とされている。2030年度と同等もしくは微減という水準で、2040年度にこれほど火力が維持されることは、気候変動の観点からは大きな問題だ。

中でも石炭火力は温室効果ガス排出の最大の排出要因だが、削減対策の強化は検討されず、非効率な石炭火力発電所に限ってフェードアウト(国際的に使われるフェーズアウト(段階的全廃)とは異なり、少しずつ縮小していくことを意味すると思われる 日本の独自の用語)する方針を繰り返すだけだった。

OECD(経済協力開発機構)加盟諸国の多くでは石炭火力のフェーズアウト(段階的全廃)に向けて削減が進められ、すでに14カ国が全廃を実現していることと比べると、日本は全廃計画すらなく対策の遅れが顕著だ。

LNG(液化天然ガス)火力についても、安定供給を理由に重要性が強調され、LNGの資源確保と権益拡大、さらに新規のLNG発電所の新設とリプレースを推進する方針も示された。天然ガスもまた化石燃料であり、利用拡大は気候変動対策と矛盾する。

火力を維持しながらのCO2削減対策として、アンモニア混焼やCCS(CO2回収貯留)技術にも力点が置かれている。しかしこれらの技術をどれだけ進め、どれほどの削減をもたらすのかは明らかではない。

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