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岐路に立たされる日本のエネルギー基本計画 再エネ、原子力、火力、日本は議論できるのか

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生成AIの普及などで電力需要が増加する中、電源構成について厳しい判断が求められる。

日本が頼る石炭火力発電は国際的には批判が強まる(写真:Kim Raff/The New York Times)

経済産業省が第7次エネルギー基本計画の策定作業に着手した。本計画では、2040年度の電力需要について見通しを立てたうえで、これを賄う電源の種類と発電量について目標を定める。

2021年に閣議決定された第6次計画からの大きな変更が見込まれる点は、生成AI(人工知能)を運用するためのデータセンターや半導体工場の増設による電力需要の大幅な増加だ。国際エネルギー機関(IEA)の試算では、2022年から2026年にかけて世界全体のデータセンター由来の電力需要は500テラワット時から1000テラワット時に倍増する。わずか4年で、世界9位の電力需要を誇るドイツ一国分の電力需要が増えるということだ。

増加する電力需要を賄うためには新たな電源への投資が必要だが、電源によっては投資回収期間が数十年にわたる。長期にわたって発電を継続することで投資回収が期待できるか、エネルギー基本計画はその判断の一助となる大きな方向性を示す、重要な資料である。

すべての希望を満たす電源は困難

一方で、その策定は容易ではない。安全性、安定供給、電力価格の低廉さ、そして脱炭素をいかに同時達成するかという難題だからだ。

例えば、脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーを増やしていく必要があることには誰しも同意するが、再エネですべてを賄うという考え方は安定供給の観点から現実的ではない。再エネの発電量は天候に左右されるからだ。曇天無風の日には太陽光発電も風力発電も稼働しない。蓄電池が普及すれば天気がいい日にためておいた電気を使えるが、技術は発展途上で、2040年までにどれだけの容量を導入できるかは不透明だ。

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