円安是正を求める声が高まるが、低金利も維持したい日本の当局はさらなるリスクを抱える。
円安是正のための方策として、アメリカの利下げによる日米金利差の縮小に期待するという、他力本願的な考え方がある。しかし、この方策はごく短期的には使えるが、数カ月単位以上の期間では効果が期待できない。
日米10年国債金利差は昨夏以降、ほぼ1年間おおむね320〜420ベーシスポイントの間で上下動しているが、ドル円相場は137円台から一時160円台まで円安・ドル高が進んでいる。直近(5月半ば)の日米10年国債金利差は340ベーシスポイント程度だが、これは昨年7月半ばの金利差と同水準だ。ちなみに昨年7月半ばのドル円相場は137円前後と、現状より20円程度円高だ。日米10年国債金利差は同じなのに、ドル円相場は20円程度も円安・ドル高が進んでしまっている。
政策金利差で為替の長期分析はできない
金利差と為替相場は短期的には相関の強いときが多いが、長期ではその相関がずれていくので、長期の分析にはあまり役立たない。例えば、直近の日米政策金利差は530ベーシスポイント程度あるが、これは2000年末以来の金利差だ。現在とほぼ同水準の政策金利差だった当時のドル円相場は115円前後と、現状より40円も円高・ドル安水準だった。さらに見れば、この後2001年の1年間でFRBは475ベーシスポイントも利下げを行い、日米政策金利差は450ベーシスポイントも縮小したが、ドル円相場はその間も20円程度円安が進んだ。2001年中、ドルは主要通貨の中で最強の通貨となった。
昨年7月半ばと足元とで日米10年国債金利差も日米政策金利差もほぼ同じなのに、ドル円相場が20円も円安になっているのはなぜか。それは円のファンダメンタルズの弱さが原因だ。
筆者が以前から指摘しているように、円の弱さの根本的な原因は次の3点だ。①日本の実質金利が大幅にマイナスとなっていること、②日本と他主要国の名目金利差が歴史的な大きさとなっていること、③日本の国際収支の悪化だ。つまり、今後仮にFRBが利下げを行って、ドル安基調となった(2001年の利下げ局面ではならなかったが)としても、円の弱さが続けば、結果的に円安・ドル高傾向が続く可能性すらある。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら