為替変動の震源「円キャリー取引」は終わったのか まだ高い円売り魅力度、金利だけでない円安要因

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自民党総裁選にともなう円安進行とその巻き戻しを経て、為替の先行きはアメリカの利下げに伴う金利差縮小が左右しそうだ。

1ドル=140円台で円高と感じる隔世の感(写真:Bloomberg)

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※本記事は2024年10月3日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

アメリカが利下げに転じ、日米金利差が縮小していくことから、この2年半の超円安局面はひとまず幕を閉じた形だ。この間、円安を加速した要因として「円キャリー取引」が挙げられる。

「8月5日以降、『円キャリー取引はどのくらい残っているのか』という質問が海外投資家から30件ぐらい寄せられた」(外資系証券ストラテジスト)

ドル円相場は7月上旬の1ドル=162円前後をピークに円高に向かうと8月5日、一時141円台をつけ、日本株は暴落。市場が大きく動揺した要因として、積み上がった「円キャリー取引」の巻き戻し(円買いドル売り)が指摘された。さらに巻き戻す余地があるのかどうか、関心が高まった。

実はあいまいな定義

キャリー取引とは、低金利通貨で調達した資金を高金利通貨で運用することでリターンを得る目的の取引を指す。資金を円で調達する円キャリー取引は円売りを伴うため、円安要因となる。

「円キャリー取引」の仕組みはシンプルだが、その定義はあいまいというのが衆目の一致するところだ。

「いわゆるキャリー取引とは金利差を収益源泉とするものだが、その全容は測れず、人によって意味合いも違う」と金融市場を分析するみずほリサーチ&テクノロジーズ主任エコノミストの東深澤武史氏は指摘する。

意味を広くとれば、円資産をもともと持っている投資家が高金利通貨や外債で運用することまでキャリー取引の一種といえる。さらに、個人投資家のFX取引、さらには外貨建て一時払い保険なども該当しなくもない。「狭義の円キャリー取引、広義の円キャリー取引」という場合に、狭義と広義の指す範囲も確たるものはない。

8月5日、円高・株安がスパイラル的に加速した一因として挙げられるのは、海外投資家による為替ヘッジの巻き戻しだ。日本株に投資する際、海外投資家の一部は為替変動の影響を避けるために円を売り建て、金利差による収益も得ていた。いわば派生的な円キャリー取引だが、株急落で日本株売りとヘッジポジションの解消が同時進行したというわけだ。

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