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なぜ日本経済は「円安」「円高」に振り回されるのか 佐藤清隆・横国大教授が語る「日本企業と為替の壁」

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再びじわりと円安が進み、衆院選、アメリカ大統領選を受けた相場動向が注目される。円と日本経済の関係を確認する。

佐藤 清隆(さとう・きよたか)横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授。1968年長崎市生まれ。98年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。2001年博士(経済学、東京大学)。2013年より現職(撮影:尾形文繁)

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2022年から続いた超円安局面が転換点を迎えたのが、2024年8月5日に起きた急激な円高と日本株の大暴落だった。円高が日本企業の収益に悪影響を与えることが意識され、その後も円安・株高と円高・株安を繰り返してきた。
なぜ日本株は、日本企業は、為替に左右されるのか。
国際金融が専門で、日本企業の通貨戦略を分析した著書『円の実力』が注目を集めた佐藤清隆・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授に聞いた。
※本記事は2024年10月28日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

――円安に振れると日本株は上昇し、円高だと株安になる状況が続いてきました。実際のところ日本企業は為替によって大きな影響を受けるのでしょうか。

為替レートが大きく動くと、日本企業の業績が大きな影響を受けるだけでなく、事業戦略そのものの変更を迫られることもあります。これを「為替の壁」と呼ぶとすれば、一部の企業を除いて、日本企業の多くはこの壁を乗り越えることができていない、というのが実情です。

日本の輸出を金額ベースでみると、ドル建て比率が半分以上を占めており、この傾向は長年変わっていません。

1998年に外為法が改正され、為替取引が自由化されました。それは「円の国際化」、特に円建てでの貿易取引を促進するためでしたが、皮肉なことに日本企業はドル建て取引を選んできました。

企業にとっての合理的な選択は、円建て取引ではなくドル建て取引だったのです。

円建てで現地販売できない限り、為替リスクを負う

現代の国際貿易では企業内貿易が主流となっています。日本の本社企業から海外の現地法人に対して輸出を行うのが一般的です。

仮に日本から現地法人に円建てで輸出をすると、現地でのビジネスをドルや現地通貨で行っている現地法人は、調達と販売の通貨のミスマッチによって為替リスクを負うことになります。現地での販売も円建てで行えるほど圧倒的な製品競争力がない限り、本社企業は現地法人に対して円建てではなく、ドルをはじめとする現地通貨建てでの輸出を選択します。

例えば日本の自動車メーカーでさえ、競合他社がひしめくアメリカ市場向けの輸出はドル建てで行わざるをえません。

ドル建てで輸出している企業は、円安になると為替差益(ドルベースの売上高を円換算することに伴う手取りの増加)を享受できますが、円高になると為替差損を被ります。

日本経済は依然として為替変動の影響からは逃れられない状況にあるのです。

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