世界の金融市場は大きく揺れ動いているが、そのきっかけの一つが人民元の下落だ。中国は8月11日人民元の基準値の算出方法を突然変更した。新しい算出方法による基準値は、前日10日の基準値に比べて大幅に低く、これを受けて市場では人民元が米ドルに対して大きく下落した。基準値は3日連続で引き下げられ、この間の引き下げ幅は4.5%程度となった。
中国は、各国政府・中央銀行が人民元を外貨資産として保有することを促進することで、人民元の国際的な利用を拡大するという戦略を取ってきた。このためには、人民元の為替レートが安定していることが前提であり、中国政府がこのタイミングで人民元を急速に下落させると予想していた人は少なかったのではないか。
中国経済の成長鈍化は予想を上回っており、日本国内の報道を見ると、中国が景気刺激策の一環として人民元の切り下げを行ったというとらえ方が圧倒的に多かった。市場では、中国経済は通貨の切り下げを行わなくてはならないほど深刻な状況であると見られて、世界的な通貨安競争を誘発するのではないかという不安も高まった。
人民元の基準値は市場実勢との乖離が修正された
しかし、世界の反応は必ずしも否定的なものばかりではない。IMF(国際通貨基金)は「人民元の為替レート決定に市場の力がより大きな役割を果たすようになるひとつのステップと見られる」として歓迎した。
IMFは、人民元をSDR(特別引き出し権、1969年にIMFが創設した国際準備資産)の価値を決める通貨の一つとして採用するためには、人民元の為替レートがもっと市場の実勢を反映するようにすることが必要だとしてきた。人民銀行のウェブサイトでは、今回の人民元の基準値の公表方法の変更は、この考え方に沿ったものだという説明がなされており、ムーディーズとS&Pの格付け会社2社も、好意的な評価を発表している。
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