人民元をSDRに組み入れることは望ましい 国際的な不均衡拡大を抑制する効果

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IMFの理事会は、年末にむけてSDRバスケットの構成などの見直しを進めることになっている。これまでのドル、ユーロ、ポンド、円という4通貨の構成比を微調整するのであれば、年末が迫ってから新しい構成比が発表されても金融市場への影響は小さいだろう。しかし、人民元をSDRに含めるという決定をすれば、数か月では対応期間が短か過ぎて金融市場が混乱する恐れがある。混乱を回避するために1年近い時間を置こうとしていることは理解できる。

人民元のSDR採用は不均衡拡大を抑止する

米国はIMFで重要事項を決定する場合には事実上拒否権を持っており、ドルの基軸通貨としての地位を弱めるような変更を阻止しようとするかも知れない。

しかし、IMFのホームページには「バスケットに新たな通貨を加える場合、賛成はどの程度必要になりますか」という質問に対する、ティワリ局長の「一般的なルールとして、SDRバスケットの評価方法を変えるには70%という大多数の賛成が、そしてSDRの構成の『原則』を変えるなど特定の変更には総議決権の85%という大多数の賛成が必要となります。歴史的に見ると、評価方法を変える決定は、70%の大多数の賛成で行われています」という答えが掲載されている。

直接答えているわけではないが、米国に拒否権が生じる重要事項に該当しないと考えていると読める。よほどのことが起こらない限り、2016年10月からSDRに人民元が採用されることになるだろう。

人民元をSDRに組み入れることには否定的な意見も多いが、筆者は世界第二の経済大国で、世界最大の輸出国の通貨がSDRのバスケットに入っていないということは不自然だと考える。

米国の利上げが続けば人民元安ドル高が進む恐れがあるが、SDRのバスケットに採用されれば外貨準備として保有する需要も生まれるので元レートの下支えに働くはずだ。人民元をSDRに採用することは、グローバルインバランス(国際的な不均衡)の拡大を抑制する効果も期待できるだろう。

人民元相場のさらなる自由化を求めてさらに5年先送りするよりも、今回の見直しでSDRに組み入れることは妥当な判断ではないだろうか。 

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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