中国の外貨準備高は2014年春ごろまでは急速に増加しており、中国政府の為替介入で人民元の上昇が抑制されていたのが見て取れる。
しかし、その後は減少傾向となっており、むしろ元の下落を抑制するような下支えの介入をしている可能性が高い。8月は中国の外貨準備が大きく減少しているのも、この可能性を強く示唆している。
もちろん外貨準備の通貨構成の影響や外貨準備を取り崩して、他の対外政策に利用しているという可能性は否定できないが、かつてのように元高抑制のために大規模な介入を行ってはいないことは確かだ。
長期的に見れば、経常収支の黒字やその一部である貿易収支の黒字が大きければ、その国の通貨は増価しやすい。しかし、6月末から上海総合指数が大きく下落し、経済活動の停滞が懸念されるなど、中国経済に対する不安は高まっている。中国政府に資本市場や為替市場のコントロールを止めさせて市場の力に任せても、大幅に人民元が上昇して中国の経常収支黒字が縮小するということは期待し難いだろう。
逆に、米国の利上げで中国から大規模な資金流出が起これば、経常収支が大幅な黒字であるにも関わらず人民元の為替レートが下落し、さらに経常収支黒字を拡大させかねない。
中国に人民元の為替レートを市場の実勢にゆだねるように要求することと、為替レートを人民元高にして国際収支の不均衡を是正するように要求することは、矛盾する要求になってしまう恐れが大きい。
2016年からSDRへの採用が濃厚
IMFは5年に一度SDRの価値を決める通貨バスケットの見直しを行っており、通常のスケジュールでは2016年初からSDRは新しいバスケットに変更されるはずだった。しかしIMF事務局は7月末に発表したレポートで、変更を9カ月先送りして2016年10月からに延期するように提案した。
IMFのティワリ戦略政策審査局長は、延期を提案した理由として、歴年末にSDRバスケットの内容が変わるということを避けることと、バスケットの変化に利用者が対応できるようにすることの2つの理由を挙げている。
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