――キャスティングも非常に素晴らしいですね。
今回はハマりました。佐藤B作さんにしろ、萩原聖人さんにしろ、本当にみんなハマっていますね。女性はほとんど出てこない。実に男がカッコいいドラマですよ。女性プロデューサーは毎日のように「カッコいい。カッコいい」と言っています。裏では難題もいろいろとありましたが、それを忘れさせるような芝居が撮れているのがうれしいですね。
――登場人物が仮名になっているとはいえ、実在の事件をドラマ化するのは苦労も多いのではないかと思いますが、こういった題材に真正面から取り組めるのは有料放送のWOWOWならではだと思ったのですが。
民放ではちょっとできないドラマです。やはり歴史から学ぶことはいっぱいあるんですよ。これは金融業界の人たちだけではなく、サラリーマンの皆さんにも観てもらいたいんです。「こういう事件があったんだ。こういうふうになっちゃいけない」といったことも学べますし。これからもどんどん歴史の事件をきちんと描いて、その中で人間ドラマを作っていくことが大事だと思いますね。
――『沈まぬ太陽』のときも、いろいろと大変だったみたいですね。
もう日本航空に乗れないかなと思っていました。でも、『沈まぬ太陽』のロケのためにたまたま大阪まで日本航空で行くことになったんですが、スチュワーデスさんたちが「がんばってください」って言ってくれたんですよ(笑)。渡辺謙さんがいたから、『沈まぬ太陽』のスタッフだとわかったんでしょうけど、それはすごくうれしかったですね。
不正会計はいつでも起こり得る
――東芝の不適切会計問題が、世間を騒がせています。
本当にタイムリーですね。「しんがり」の世界と東芝の問題がマッチングしています。企業というのはああいうことが起こり得るんだということを、あらためてわれわれは思い知らされた。そういったことは繰り返しちゃいけないんだ、ということを提示するためにも、このドラマはいろいろな人に観てもらいたい。
――証券業界のリサーチもかなりされたのではないでしょうか?
山一の「しんがり」チームの人たちと会って、いろいろと教えてもらいました。なんか意外とひょうひょうとして。でも、彼らにはやりきった感があった。もちろんドラマの登場人物と本物とはちょっと違う、というようなことも言っていましたが。それでも男の生き様、男気みたいなことにはすごく共感してくれていたように思います。
――清武さんの原作では、しんがりのメンバーたちも、「当時は大変だったが、サラリーマンとして幸せな人生だった」といった感じに書いてありましたが。
僕らのドラマもそうなっています。ただ、社内の仲間を実名で報告するかどうかには、最終的な迷いはあったと思います。でも「社内の不祥事を社内の人間が処理しないでどうするんだ」といった思いに背中を押されて、「よし、やっぱり公表しよう」となるんですね。
――ドラマには山一證券のロゴも印象的に登場しますね。
真っ白な地に赤で「山一」と。これは非常にシンプルですが、ものすごくインパクトのあるロゴです。これを僕らは随所に使っています。実はエキストラの中にも山一を退職なさった方が何人かいらっしゃって。自分たちで「山一」というロゴがついたバッジを持参してくださった。ちゃんとエキストラ用のバッジは用意していたんですが、彼らは「これでやらせてください」と。そういうのもなんだか不思議な感情を持ちました。それから『沈まぬ太陽』の時も、やはり遺族のご子息たちで、エキストラで来てくださった方がいらっしゃいました。終わってから言われるので、「最初から言ってくださればいいのに」って言ったんですけどね。
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