――今回この題材をドラマで扱うにあたって、たくさんのリサーチをされたと思います。あらためて調べてみて、山一證券の事件をどう見ていますか?
僕がプロデューサーから企画をいただく時は、なぜ今、それをやる意味があるのかが大事になる。そして監督として情熱を傾けられる作品かどうかがとても大事になる。それが自分とフィットしないと題材に向かえないですから。
今回のドラマは僕が以前に監督した『沈まぬ太陽』と似ています。理想主義と原理主義のぶつかり合いの中で、主人公は会社をなんとか立て直したいと考える。
本当はそういう社員であってはいけないんでしょうが、それでもそういう社員がいなければ、会社がダメになるんだろうなと。そういう意味で共通したものを感じますね。
「なぜ潰れたのか」を解明するのがテーマ
――「自分にフィットしたものがなければ」とおっしゃいましたが、今回のドラマで若松監督に「これなら」と思わせたものは何だったのでしょうか?
僕はテレビの仕事が長いのですが、最近のテレビには、人間と人間がぶつかり合うような、そういう芝居やドラマが少ない。いわゆる活劇ですね。今回は、いい大人たちがガンガンぶつかり合うようなドラマになるなと思った。もちろん大人だから暴力にはならないんですが、それでも言葉の暴力が飛び交うドラマになりそうだと。それが今の映像世界では非常に新鮮ですからね。
なぜ山一證券が潰れたのか、それを解明すること。このドラマのテーマはハッキリとしています。それを解明するうえで、強力なリーダーシップを持つ男が現れます。そして彼に影響されて弱き者たちがどんどん強くなっていく。その構図がわかりやすい。
その弱きものたちが立ち向かう相手は、社内の偉い人たちであり、硬直化した会社のシステムでもあり。彼らはそこにメスを入れていくわけです。相手はエリート集団ですからいろいろと困難もあります。でも、そうやって戦う姿は応援したくなりますし、撮っていても「もっとやってくれ」と思う。大きなエネルギーが沸いてくるんですね。シンプルなストーリーながら、人間同士の格闘はゾクゾクする。役者の芝居ってこんなに面白いんだと思ったのは久々ですね。
――証券会社ならではの専門用語も多数出てくるわけですが。
「飛ばし」「ニギリ」なんて言葉は、普段あまり聞かないですよね。ですから視聴者に理解してもらうために、そういった専門用語にはテロップを出そうかと思っています。役者がこんなに悩んでいて、セリフがなかなか言えないという作品も珍しい。役者たちが真剣に悩んでいるところを見るのも、また楽しいんですよ。特に江口洋介君や佐野史郎さんなんかも「これは難しい。こんなに苦労するのは久しぶりだ」と言っていました。実にいいことですね。
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