その理由は、第1に、1990年代の不良債権処理に時間がかかりすぎたことであり、第2に、1980年代にバブルに酔ったために、1980年代、調子のよい時代に21世紀を見据えた次の時代への戦略を、企業も政府も経済学者も立てなかったことにある。
前者の理由は広く共有認識されているが、後者は20年前から筆者は主張し続けているが、誰にも相手にされてこなかった。しかし、重要なのは後者なのである。
1980年代、ソニー(現ソニーグループ)は何でもできた。しかし、成功に酔い、ソニー礼賛の風潮が世界を席巻した。ソニーが次の手を打てば、誰もがそれについてきて、世界はソニーシステムに支配された可能性もあったのに、ただ自由に好きなことができる状況に酔い、社員はソニーの社員であることに酔い、何もしなかったようにみえた。
21世紀になっても、アップルから「iPodなどを一緒にやってくれないか」などと頼まれたのに、あえて断って、自分たちが1980年代にやっていたことを21世紀にもやろうとして、結局、行く場所は未来どころか、現在にもなく、過去に戻り続け、自滅した。
アメリカのテックバブルとは、どこが違ったのか
ソニーをやり玉に挙げたが、日本経済全体がそうだった。「ジャパンアズナンバーワン」と持ち上げられ、自分たちでインフレさせた株価と円高で、株式の時価総額世界ランキングは日本企業が独占し、東京の山手線の内側の土地価格で、アメリカ全土が買えるという試算を出して、喜んでいた。そして、ロックフェラーセンターを馬鹿高い価格で買って喜び、そのあとは何もしなかったのである。
ここがアメリカの1990年代末から2001年へのテックバブル(ITバブル)と、大きく異なるところである。アメリカのテックバブルはバブル崩壊後、その悪影響で同国経済を停滞させることはなかった。
これは、一義的には、こちらは株価バブルに限定され、銀行システムが巻き込まれなかったため、経済全体に悪影響が波及しなかったからだと理解されている。そこが、日本の1980年代の不動産バブル、アメリカのサブプライムバブルと異なるところだと教訓として残されている。
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