電気・ガスなし築73年「廃団地」が満室の不思議 廃団地を90万円で購入して貸し出したら…

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あまり知られていないと思うが、公的住宅は使用期限をあらかじめ決めて供用を開始している物件が多く、この団地の場合は70年。期限に向けて公社では築50年を過ぎたあたりから新たな募集を減らしてきており、3年前に期限が切れると同時に最後の入居者が退去、団地は無人になった。

団地の入札に参加したのはたった1人

しばらくはそのままだったが、放置し続けるわけにもいかなかったのか、2024年2月に1回目の入札が行われた。宅建事業者に売却ということだったが、初回は手を上げる事業者はいなかった。

売却する側としては建物を解体し、更地にしてからの活用を想定していたのかもしれないが、団地の敷地まではそれほどの坂ではないものの、その背後は傾斜地。B棟の背後には崖があり、以遠は急な石の階段が続く。崖の上の神社は崩落しており、かつてあった参道は立ち入り禁止とされている。

そうした崖を背負った土地で建物を解体・新築しても人口減少が著しい北九州市で収支が合う可能性は非常に低い。といっても現状、廃墟に近い状態になった団地をそのまま使い続けるという判断は普通の不動産会社、不動産オーナーにはなかなかできることではない。

だが、世の中にはそういうことができる”変態”(無茶苦茶ほめている)が確実にいる。同年6月に行われた2回目の入札にただ1人参加し、この団地を残そうと購入した吉浦隆紀さんはそうした1人だ。

吉浦さんは福岡市城南区樋井川にある自社ビルを相続し、その再生を通じて空き家の活用に目覚めた。樋井川は最寄り駅から歩くと40分という公共交通利用に関しては超絶不便なエリア。そこに継承したのは現時点で築50年前後という古い賃貸マンション2棟である。

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