日産狙っていた?「ホンハイ」EV事業に漂う暗雲 iPhone工場として有名、次の軸を探すものの…
鴻海がiPhoneの生産拠点を置き、サプライチェーンを構築している中国市場もこの数年で競争構図が激変している。
中国市場はBYD(比亜迪)が急激に販売台数を伸ばし、今や一人勝ちの状況だ。BYDは2020年時点で吉利の後塵を拝しており、コロナ禍で医療マスクの生産に勤しんでいた。
当時、BYDがテスラに肩を並べる世界的EVメーカーになると想像していた業界関係者はほとんどいなかった。
鴻海はハードとソフトのプラットフォームを提供して、受託製造企業になることを目指しているが、中国においてはファーウェイ(華為技術)が自動運転システムやスマート部品の供給元として存在感を高め、中国メーカーの駆け込み寺になっている。
一方、鴻海が提携を発表したバイトンはそれから間もなく破産を申請した。
鴻海と吉利とのEV新会社のその後の動向もほとんど伝わってこない。似たような枠組みであるバイドゥ(百度)と吉利の合弁メーカー「極度汽車(集度汽車から2023年8月に改称)」は2024年12月に経営破綻状態であることが判明し、中国のEV業界に衝撃が走った。
アップルカー頓挫も転機
EV市場の成長が鈍化し、競争にふるい落とされるメーカーが続出する中で、鴻海が当時描いた「水平分業」「受託製造」というビジネスモデルは不透明感が増している。その象徴は今春報じられたアップルのEV開発断念のニュースだろう。
アップルカーはiPhoneと同様に委託生産を前提としており、iPhoneで大きくなった鴻海は当然のように有力な受託先として名前が挙がっていた。
アップルカーの開発頓挫は、IT企業にとってEV開発はコストが見合わないこと、EVはスマートフォンの水平分業モデルを適用しにくいことを示唆している。
自動車運転の次の競争軸も、EVから自動技術に移っている。
とはいえ、である。受託製造を礎とし、サプライチェーンに長年投資をし、スマホ市場の頭打ちに直面する鴻海は簡単にEVの受託製造を見切るはずもない。ただ、鴻海に限ったことではなく、どのプレイヤーも外部環境の変化と業界の混沌に対応するために新しい、かつ大きなピースを求めている。その一例がホンダと日産の統合案とも言える。鴻海が今後どこに何を仕掛けても、不思議はないということだ。
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