日産狙っていた?「ホンハイ」EV事業に漂う暗雲 iPhone工場として有名、次の軸を探すものの…

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ゼロからEVをつくりあげたテスラに大きな刺激を受けた中国人IT起業家は、競うようにEVメーカーを立ち上げ、中国のEVシフトの駆動力になった。

iPhoneの受託生産で押しも押されもせぬ世界的EMS企業に成長していた鴻海の郭台銘氏も同じころ、マスクCEOと接触している。アップル依存のリスクを認識していた鴻海は、EVならスマートフォンと同じように水平分業モデルが成り立つと想像したのだ。

日産 ホンダ ホンハイ 
郭台銘氏。写真はシャープ買収正式契約会見後のパーティーでの様子(撮影:ヒラオカスタジオ)

当時の報道を見ると、郭台銘氏はEVの受託製造についてメディアの取材や公の場で語るようになり、「1万5000ドルでつくれる」という具体的価格を示してもいる。

幻の「鴻海・テンセント連合」

鴻海の「EV製造の夢」は徐々に加速していく。2015年6月、中国メガテックの一角であるテンセント(騰訊)、中国ディーラー大手の和諧汽車と組み、EV会社を設立する動きが表面化した。

IT技術に強みを持つテンセントと、製造技術に強いホンハイが手を組むことで従来にないEVを開発することを目指し、新会社のトップ選定には郭台銘氏、テンセントのCEOの馬化騰(ポニー・マー)氏も立ち会ったとされる

ただ、このプロジェクトは合弁会社設立前に鴻海、テンセントが撤退し、「BYTON(バイトン)」として再出発することになる。BYTONは2020年1月に総合商社の丸紅との資本業務提携を発表したので、聞いたことがある人もいるだろう。

鴻海は2018年、中国の新興EV企業「小鵬汽車」にも出資した。アリババ出身の起業家が立ち上げた小鵬汽車は技術力が評価され、多くの投資を集めており、郭台銘氏は自ら小鵬汽車を訪れ、激励した。

鴻海はその後もEV産業との距離を縮め、2020年以降は自らのポジショニングを「EV界のアンドロイド」と明確にした。

テスラの上海工場が2019年末に稼働し理想汽車、小鵬汽車、そして蔚来汽車(NIO)の新興EV3社の経営も軌道に乗った。EV市場が一気に活気づいたことで、中国では空前の参入ブームが起きていた。

鴻海はiPhoneの受託製造で成長した成功体験を、EVでも再現しようと考えた。iPhoneのときと違うのは工場ではなくハードウェアとソフトウェアのプラットフォーマーを志向した点だ。「下請け」から「頭脳」に飛躍するため、鴻海はテスラをiPhoneに例え、「EV界のアンドロイドになる」と公言するようになった。

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