緊張する場で平常心が保てる人・保てない人の差 焦る・不安な気持ちになるときの「心の仕組み」

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森田療法では、不安が強い人というのは、「欲望」が強い人と考えられています。

会社の健康診断を受けて、何かの項目で引っかかったら、あなたはどうしますか? 血圧が少し高いとか、尿酸値がわずかに上がったときの反応は、大きく2つに分かれると思います。

「これは大変だ!」と慌てて病院に駆け込む人もいれば、「少しくらい数値が高くても大丈夫だろう」とノンビリと構えている人もいます。

大慌てで病院に行く人は、「健康でなければならない」とか、「すべての数値が正常であるべきだ」と考えていますから、少しの数値の変化に動揺して、すぐに不安な気持ちになります。

「多少の問題があっても、気にする必要はない」と考える人は、気持ちが焦ることはなく、不安になることもありません。森田療法では、この違いを「生」に対する欲望の差……と考えています。

「生」に対する欲望が強ければ強いほど、「死」に対する不安が強くなります。「まだ死にたくない」とか、「死ぬのは怖い」と考えるから、健康診断の結果に動揺して、不安な気持ちになります。

極端なことをいえば、「いつ死んでもいい」と思っている人であれば、死の不安を感じることはないのです。「生」に対する欲望が極端に強いことが、不安になる原因の1つといえます。

人に嫌われてもいいと思えば、緊張は和らぐ

入学試験のケースで考えてみると、試験に落ちるのが不安で仕方がない人というのは、絶対に合格したいと思っている人です。「合格したい」という欲望が強いから、「不合格になったら、どうしよう……」という不安を抱え込むことになります。

同じ学校を受験しても、それが「記念受験」(合格する見込みがない、記念のための受験)であれば、緊張や不安を感じることなく、気楽に臨むことができるのです。

健康でありたいとか、希望する学校に合格したいという思いは誰にでもありますから、緊張したり、焦ってしまうことを良し悪しで考える必要はありません。大事なのは、自分の欲望が強いから、不安になるのだな……という心の「仕組み」を理解して、前向きな気持ちで不安と向き合えばいいのです。

その不安にどうしても耐えられなければ、欲望のテンションを意識的に下げることによって、その不安から解放されます。

日本人の場合は、「周囲から嫌われてはいけない」という強い欲望があるため、少しのことで不安になったり、焦ったりします。「少しくらい、人に嫌われてもいい」と考えることができれば、それに応じて、緊張や不安を和らげることができます。

欲望のテンションを下げるとは、これまでとは違う視点で物ごとに向き合って、少しだけ考え方を変えることを意味しています。

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