退職者による「企業秘密」漏えいを防ぐ4つの方策 「秘密保持契約」を形骸化させてはいけない

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(4)技術的管理

「企業秘密」の多くがデジタルデータ化している今日では、退職の意向を示した者がデジタルデータにアクセスできないように技術を駆使することが不可欠です。たとえば、

①「企業秘密」を取り扱っている部署に入室できないように入室用セキュリティカードの設定を変更する
②共有サーバや共有フォルダ内の「企業秘密」を保存している共有フォルダや共有ファイルにアクセスできないように権限を変更する
③退職日に先行して、共有サーバやクラウドを利用するためのIDを使えないようにする

などです。

「法的対応」をとる際の留意点

退職者が「企業秘密」を不正に持ち出して転職先などで使用した場合、持ち出された企業は、退職者や転職先企業に対して損害賠償請求や差止請求をします。訴訟まで至らずとも警告書を送る場合もあるでしょう。

『企業実務1月号』(日本実業出版社)。書影をクリックすると企業実務公式サイトにジャンプします

退職者が、退職後の秘密保持契約を結んでいるときは、こうした動きの法的根拠は秘密保持契約違反(守秘義務違反)と、不正競争防止法違反(営業秘密侵害行為)です。退職後の秘密保持契約を結んでいないときは、不正競争防止法違反が法的根拠になります。

ただし、不正競争防止法が損害賠償や差止めを認めているのは「営業秘密」が侵害された場合に限られます。そして、「営業秘密」は①非公知性、②有用性、③秘密管理性という3つの要件を満たしたものに限定されます。

企業が「企業秘密」として保護したいと考えている情報であっても、3つの要件を満たしていないときには、不正競争防止法では保護されません。そのために、日頃から、(1)~(4)で説明した内容を意識した秘密管理を徹底しておくことが必要です。

後編は1月7日(火)に配信予定です。

 

浅見 隆行(あさみ たかゆき)*公式サイトはこちら
アサミ経営法律事務所代表弁護士。(株)APT、(株)ドラEVER社外監査役。1997年早稲田大学法学部卒業、2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2009年アサミ経営法律事務所設立。企業危機管理・リスクマネジメントを中心に、会社法・株主総会・情報セキュリティ(企業秘密・個人情報)・危機管理広報など企業法務全般に取り組んでいる。著書に『判例法理・株主総会決議取消訴訟』(中央経済社、共著)ほか、記事執筆、メディア出演多数。
企業実務
きぎょうじつむ

仕事をすすめるうえで必要な実務情報や具体的な処理の仕方を正確に、わかりやすく、タイムリーにお届けする月刊『企業実務』。経理・税務・庶務・労務の事務一切を一冊に凝縮。1962年の創刊以来、理論より実践を重んじ、“すぐに役立つ専門誌”を貫き、事務部門の業務を全面的にバックアップしている。企業実務の公式サイトはこちら

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