危機の指導者チャーチル 冨田浩司著 ~問題は国民にあるのではと問いかける
評者 中沢孝夫 福井県立大学特任教授
「選挙というものは、野党が勝つものではない。与党が失うのだ」(マクミラン元英首相)とある。そして「政治では一週間は長い時間だ」(ウィルソン元英首相)と。たしかに「現実には連日生起する夥(おびただ)しい数の課題を処理する能力のない指導者に、大きな戦略的判断を期待することは難しい」のだ。
「国家を指導する」ことを人生の目的とした「野心家」ウィンストン・チャーチルの一生を描きながら、民主主義とは、リーダーとは、政治とは……と問いかけている本書は、味わい深い言葉にあふれている。
「戦火の中にあっても議会が機能し続けた」英国で、チャーチルは「言葉」によって国民を導き、歴史をつくった政治家だが、英国の存亡がかかった1940年の5月、次のような演説をしている。「決意をもってそれぞれの務めに取り組もう。大英帝国と英連邦が千年間続くとしても、後世のひとびとが『これが彼らの最も輝ける時だった』と振り返るように」。
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