危機の指導者チャーチル 冨田浩司著 ~問題は国民にあるのではと問いかける

このような「演説を聞くとき、国民は自らが歴史の一部になったことを自覚せざるをえない」だろう。「国民はリーダーシップがある限りあらゆる犠牲を払う用意がある」と本書は指摘するが本当だ。英国の国民は「自分たちを信頼し」第2次世界大戦を勝利に導いた「危機の指導者」チャーチルを愛した。しかし平時にもどった直後の選挙では彼に退場を通告した。それは民主主義の「勝利」である。

「法治主義の母国」英国とは、政治指導者が「極めて広範な権力を揮う」「人治」の国であると著者はいう。しかし日本も制度上では大きな違いはない。「議会に基盤があれば」行使する権力に制約は少ないのだ。問題は自覚と能力をもつリーダーと、それを選ぶ国民にある。日本の今を読み解く最良の一冊である。

とみた・こうじ
外務省北米局参事官。1957年兵庫県生まれ。東京大学法学部を卒業。外務省に入省し、総合外交政策局安全保障政策課長、同局総務課長、在韓国日本大使館、在英国日本大使館各公使などを歴任。英国には、研修留学と2回の大使館勤務で、計7年滞在。

新潮選書 1365円 317ページ

  

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