世界的音楽家・辻井伸行「思い出の大作」への情熱 名門レーベル「ドイツ・グラモフォン」と専属契約

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この手から美しい音楽が生まれる(撮影:今井康一)

――ハンマークラヴィーアの録音では、緩徐楽章の第3楽章に苦労したそうですね。

3楽章だけで20分弱くらいある長い楽章なので、集中力を途切れさせることなく弾くのはまさに精神的な戦いです。苦しみや悲しみをゆっくりしたテンポで表現するので、一つひとつの音を大事に大事に表現しなければならない。悩んで悩んで、とにかく弾き込んで、納得いく演奏にするまでには時間がかかりました。

音楽の流れが途切れないことを意識して、早すぎてもいけないし遅すぎてもいけない。テンポについてはグラモフォンのエンジニアやプロデューサーと何度も話し合い、何回も弾きなおして自分が「これだ」と思うものを選択しました。

せっかくグラモフォンと第1弾のCDを出すのですから、納得いく演奏にしたかった。録音でも編集でも、これでいいんだろうかと何度も弾いて、何度も聴きなおした。時間もかかり大変な思いはしたけれど、完成したときには大きな達成感がありました。

――素朴な疑問ですが、初見の楽譜はどうやって読んでいるのでしょう。

普通の人は全部楽譜が読めますが、僕の場合は譜面を読んでもらっている先生に、楽譜に書いてあることを片手ずつに分けて録音してもらって、それを再現する。表現に関する作曲家の指示など、楽譜に書いてあることも全部説明してもらっています。

ピアノが嫌になったことは一度もない

――国内外のいくつもコンサートが重なる中での録音でした。1日何時間くらいピアノに向き合うのですか。

コンサート旅行の移動中は弾けないのですが、予定がなくて家にいる日は朝から晩まで練習していることが多いですね。最近ではツアー中も合間で時間があったらスタジオを借りて練習していることが多いですね。

僕はピアノを弾くことが好きなんです。人前で弾くことが好きだし、目標があると頑張るタイプ。コンサートも自分にとって大きな楽しみの一つだし、新しい曲に挑戦することも大好きです。何かに挑戦するときに燃えるタイプなんです。だから練習が苦になったり、ピアノを弾くのが嫌だなと思ったりしたことは、どんなに大変なときでも一度もないんですよ。

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