17年ぶりの利上げに踏み切った日本。企業や個人も今までと違う対応を迫られる。

「年2%」という数字に、この12月、銀行界には衝撃が走った──。
ネット専門銀行のPayPay銀行が新たな普通預金「預金革命」を発表したからだ。顧客が円とドルの両方を普通預金で預けると、ドル預金に為替リスクなどはあるものの、年2%(税引き前)の利子がつく。多くの銀行で普通預金金利が0.1%という中、その20倍は破格と言えよう。
PayPay銀行だけではない。SBI新生銀行は今月から、28歳以下を対象に、普通預金の金利を従来の約3倍の0.3%へと上げる。
銀行の普通預金金利と言えば、長く年0.001%だった。それが2024年に入って、2度引き上げられ、0.1%まで上昇。引き上げ前と比べ100倍である。100万円預ければ1年後の利子は10円だったのが、利上げを受け、100万円の1年後の利子は1000円に変わった。企業融資で利ザヤ改善が追い風の銀行は、その原資となる預金獲得に奔走しているというわけだ。
今まで意識されなかった金利。だが、「金利ある世界」は、着実に日々の生活に入り込んでいる。
長く続いた超金融緩和時代が大転換
金利が動く影響は大きい。銀行の預金金利の引き上げは、今年3月に実現した日本銀行による「マイナス金利」解除の余波だ。約17年ぶりの利上げをもって、日本の金融政策は大きく転換した。
黒田東彦・前総裁が率いる日銀がマイナス金利導入を決めたのは、2016年1月。金融機関が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用した。その後も異例の措置を続けてきたが、2023年4月の植田和男総裁の就任を機に、風向きは大きく変わる。
日銀が誘導する政策金利は、従来のマイナスから、無担保コール翌日物で「0〜0.1%程度」へ変更。あわせて長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃した。7月には追加利上げで「0.25%」へと引き上げた。
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