新幹線の札幌延伸、函館素通りで泣く市民 全国各地で見られる負の側面
長い不況から抜け出せない北の大地にも建設のつち音が絶えない地域がある。2015年度の開業を目指す北海道新幹線。青函トンネルを抜け、木古内-新函館(仮称)間を結ぶ38キロメートルの建設区間である。
11年暮れには札幌までの延伸も決まった。新函館-札幌間(211キロメートル)の工事費は1兆6700億円。その大半は国庫によって賄われ、道の実質負担額は3000億円程度にすぎない。工事で落ちるカネがもたらす経済効果に加え、35年度の開業後は毎年1400億円の新規需要を生むと地元は期待を膨らませる。
朝夕を除けばほとんど列車が停車することのないJR渡島大野駅。そんな無人駅が、新函館駅と名を新たに“北の玄関口”として生まれ変わる。駅周辺は工事が始まっており、ブルドーザーやタンクローリーがひっきりなしに行き交う。
反故にされた新幹線 函館駅乗り入れ案
が、新駅の登場に函館市民は複雑な感情を抱えている。理由の一つは新駅が函館駅から18キロメートルも離れているという点だ。新駅で降りた利用客は在来線に乗り換えて函館に行かなければならない。加えて、新駅が設置されるのは函館市ではなく隣の北斗市である。駅の観光案内所やバスターミナルの設置場所をどうするかなど、函館を訪れる客の利便性を高めるための駅周辺整備に函館市は口出しすることもできない。06年に北斗市長が「新駅は函館の行政区域外なのだから“新函館”という駅名は奇異に感じる。“北斗駅”にすべきだ」と発言したことも、函館市民の感情を逆なでした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら