新幹線の札幌延伸、函館素通りで泣く市民 全国各地で見られる負の側面

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整備新幹線の着工に際しては、財源確保などの諸要件を満たす必要があるほか、JRが並行在来線を経営分離する場合には沿線自治体の同意を得なければならない。今回、JR北海道は札幌延伸時に函館-小樽間を並行在来線として経営分離する方針(小樽-札幌間は存続)で、新函館-函館間も分離対象区間に含まれる。こうした中、分離に最後まで抵抗したのが函館市だ。

最大の理由は、新函館駅が函館市街地から離れていることだ。新幹線が青函トンネルを抜け札幌に向かうには、函館駅に乗り入れると大きくう回する形になる。このため、道は札幌までの距離を短縮するため、函館市を通過しない現行ルート案を1994年に決定した。

当初、道は函館市に対して在来線を3線化するなどの方法で新幹線車両を新駅から函館駅に乗り入れさせるという条件の下、市外への新駅設置を認めるという確認書を同市と交わした。函館市は03年の函館駅舎新築時、新幹線時代に対応する駅舎にするため、と50億円をJR北海道に補助している。

反故にされた函館駅への乗り入れ案

ところが、函館駅への新幹線乗り入れ案が日の目を見ることはなかった。確認書が交わされたものの、「その後の協議もないまま反故にされた」と同市の関係者は話す。しかも、JR側は在来線は3線化どころか、札幌延伸後は経営分離によって運営から手を引くことになってしまった。

これではまるで“捨て石”ではないか--。11年11月、整備新幹線着工に向けた国の動きに伴い、道は沿線自治体の経営分離同意取り付けを急ぐことになったものの、函館市民が猛烈に反発。工藤寿樹市長は期限の12月16日までに回答できない事態となった。

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