就職後の管理などは当然、雇用側で100%やっていただく。当社が障害者に指示を出せば、偽装請負になりかねない。問題の記事は企業負担をすべてなくすかのように見せる「切り取り」で、悪意があるとしか思えなかった。
――エスプール・ショックは事業にどのような影響を与えましたか。
進行中だった新規案件のキャンセルはあったが、既存顧客の解約は1件もなかった。むしろ、利用企業からは激励の言葉を多数頂戴した。応援の意味を込めて、あえて取引を拡大してくれるケースもあった。報道内容と実態との乖離を、現場を知る人には理解してもらえた。
心苦しかったのは、障害当事者やその親御さんに心配をかけたこと。電話やメールで「潰れませんよね」との問い合わせが殺到した。
当社の農園で働く障害者は全員、数日間の実習で適性を見極めたうえで採用される。その倍率は約2倍だ。彼らは死に物狂いで職業と自分の居場所を勝ち取っている。当事者の頑張りを否定されたのが、いちばん悔しかった。
業界リーダーとしての責任がある
――今後はどのように農園就労への社会的な理解を得ていきますか。
このビジネスモデルを作り上げたのは当社なので、われわれには業界のリーダーとしての責任がある。エスプール・ショックは、それを自覚するよい契機になった。昨年12月に農園の事業運営指針を定めて公表したほか、ロビー活動を強化した。
以前は批判があっても、新しいチャレンジには付きものと思い、積極的に反論してこなかった。でも、これだけ規模が大きくなると、きちんと事実を伝えていく必要が生じる。行政や福祉など、関係者に農園就労の実情を説明している。
ただ、農園は選択肢の1つでしかない。当社が最終的に目指すのは、障害者雇用支援のプラットフォームだ。デザイナーやエンジニアとか、特定のスキルを持つ障害者を企業側とマッチングさせる、そんな新サービスの準備も進めている。
障害のある子供が生まれても、「エスプールがあるから大丈夫」と親が思える。そんな世界を作りたい。
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