障害者「農園就労」大手エスプールが批判に答えた 「雇用率を金で売る代行ビジネス」との非難も

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就職後の管理などは当然、雇用側で100%やっていただく。当社が障害者に指示を出せば、偽装請負になりかねない。問題の記事は企業負担をすべてなくすかのように見せる「切り取り」で、悪意があるとしか思えなかった。

――エスプール・ショックは事業にどのような影響を与えましたか。

進行中だった新規案件のキャンセルはあったが、既存顧客の解約は1件もなかった。むしろ、利用企業からは激励の言葉を多数頂戴した。応援の意味を込めて、あえて取引を拡大してくれるケースもあった。報道内容と実態との乖離を、現場を知る人には理解してもらえた。

心苦しかったのは、障害当事者やその親御さんに心配をかけたこと。電話やメールで「潰れませんよね」との問い合わせが殺到した。

当社の農園で働く障害者は全員、数日間の実習で適性を見極めたうえで採用される。その倍率は約2倍だ。彼らは死に物狂いで職業と自分の居場所を勝ち取っている。当事者の頑張りを否定されたのが、いちばん悔しかった。

エスプール
取材で訪れた千葉県市川市の農園はほうれん草や小松菜を栽培していた(記者撮影)

業界リーダーとしての責任がある

――今後はどのように農園就労への社会的な理解を得ていきますか。

このビジネスモデルを作り上げたのは当社なので、われわれには業界のリーダーとしての責任がある。エスプール・ショックは、それを自覚するよい契機になった。昨年12月に農園の事業運営指針を定めて公表したほか、ロビー活動を強化した。

以前は批判があっても、新しいチャレンジには付きものと思い、積極的に反論してこなかった。でも、これだけ規模が大きくなると、きちんと事実を伝えていく必要が生じる。行政や福祉など、関係者に農園就労の実情を説明している。

ただ、農園は選択肢の1つでしかない。当社が最終的に目指すのは、障害者雇用支援のプラットフォームだ。デザイナーやエンジニアとか、特定のスキルを持つ障害者を企業側とマッチングさせる、そんな新サービスの準備も進めている。

障害のある子供が生まれても、「エスプールがあるから大丈夫」と親が思える。そんな世界を作りたい。

石川 陽一 東洋経済 記者

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いしかわ よういち / Yoichi Ishikawa

1994年生まれ、石川県七尾市出身。2017年に早稲田大スポーツ科学部を卒業後、共同通信へ入社。事件や災害、原爆などを取材した後、2023年8月に東洋経済へ移籍。経済記者の道を歩み始める。著書に「いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録」2022年文藝春秋刊=第54回大宅壮一ノンフィクション賞候補、第12回日本ジャーナリスト協会賞。

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