「さらばスーパーカブ50」原チャリは消えゆくのか 電動アシスト自転車と原付2種の狭間で
「ただ、スーパーカブ50は70年近い歴史を積み重ねていますので、そのぶんお客様の支持があるのだと思います。ビジネスにも趣味にも使える、懐の深さがある」(森口さん)
そう、スーパーカブ50は「趣味」のバイクだ。
発売から長らく新聞や郵便の配達用としても活躍してきたため、「ビジネスバイク」のイメージが強かった。
そのイメージががらりと変わったのが、90年代後半だ。
「レトロでおしゃれな乗り物というイメージで、ライフスタイルとして乗る若者が増えました」(同)
「うるさい」「危ない」というバイクの負のイメージとは一線を画し、「スーパーカブのある生活」という独自の文化が醸成されていったという。
自分の好みの外観にカスタマイズするファンもいる。今では全国にオーナーズクラブが設立され、ファンミーティングが開催されているという。
スーパーカブは「別格」
モータージャーナリストの大屋雄一さんは、原付き1種のバイクのなかでも、スーパーカブ50は趣味性の高さにおいて「別格」だという。
開発当時、専務の藤沢武夫氏は「誰でも扱えるようなもので、特に女の人が乗りたくなるようなバイクがほしい」と、社長の本田氏に注文をつけたという。
シートの高さを抑えた乗り降りのしやすい車体のレイアウト、泥がはねてもスカートが汚れにくい大きなフロントカバー。
乗る人を選ばない使い勝手のよさは、「機能美」としてバイクらしくない、まったく新しいスタイリングを生み出した。バイクといえば「男の乗り物」だったころ、ジェンダーレスの時代を先取りしていた。
「20代、30代の女性は『あの形が好き』という人が多い」(大屋さん)
モデルチェンジを繰り返しても基本デザインは70年あまり変わらない。遠くからでも一目でわかる。