急増する外国人訪日客に「おもてなし」が不要なワケ インバウンド急増に混乱する"現場のホンネ"
「正直、外国人客の接客は面倒くさいし、時間もかかります。日本人スタッフの多くは、できればやりたくないと思っていますよ。
だから外国人客が入店してきたら、すぐに中国人スタッフのAを探します。彼女は中国語だけでなく、英語も話せますから。もしAが見当たらなかったら、『うわっ!』となります。そして、日本人スタッフ同士で暗黙の押し付け合いが始まります。『お前が行け』って、目で合図を送り合うんです(笑)。
ただ、最近はあまりに外国人客が増えたので、Aだけでは対応しきれなくなっています。私たち日本人スタッフが、仕方なく対応するケースが多くなっていますね」
また、都内の百貨店で化粧品アドバイザーをしている女性が、忸怩たる胸のうちを明かしてくれた。
「会社からは多言語翻訳ツールを使って接客するよう指示されています。でも、正直あまりうまく対応できていません。多言語翻訳ツールを使ったって、普段と同じようには接客できないですよ。
あと、外国人を前にすると、やたら緊張するんですよね。接客らしいことなんて、ほとんどできていないと思います。『これください』と言われた商品の会計と包装をするだけで精一杯です。本当は、関連の商品をいろいろ紹介できたほうがいいんでしょうけど……」
「言葉の壁」は現時点で完全には解消できない
このように、外国人客に対する準備が整っておらず、その場しのぎの受け身の対応をしている現場は多い。そして、勝手がわからず右往左往しているうちに外国人客がさらに増え、ますます対応が難しくなっているのが実情だ。
将来的にはAI技術の進化によって、こうした問題はほぼ解消されるだろう。おそらくAIを搭載したロボットやタブレット端末が、相手の言葉でパーソナライズされた接客をする姿が一般的になるはずだ。その意味で、人が関わる応対が必要とされる場面は、これから次第に減っていくのは間違いない。
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