障害者支援「A型事業所」からB型に流す悪質手口 「個人の連絡先の交換は禁止」という規則が横行

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タミオさんによると、これまで働いてきたA型事業所も問題が多かった。「個人の連絡先交換禁止なんてよくあること」。ある事業所では職員が足りないという理由で、タミオさんが職員用の制服を着てほかの利用者を施設外就労に引率するよう命じられたこともあったという。「低賃金で人を送り出す派遣会社のようでした」とため息をつく。

悪質業者には退場してもらいたい

本連載でもA型事業所の問題は何度か取り上げてきた。利用日の水増しや契約と違う仕事の強制、勤務時間の一方的な繰り上げ、休憩中も含めた会話禁止など。障害福祉サービスの担い手としてはふさわしくない、金儲けの手段としか考えていない事業所も少なくなかった。

利用者がこうした実態を行政機関に訴えても、具体的な対応につながることはほとんどない。複数の利用者に対し、利用日の水増しや業務内容の虚偽記載が行われていたケースもあったが、このときも所管の自治体は指定取り消し処分ではなく、報酬の一部返還を命じただけだった。これでは悪質業者がいなくならないわけだ。

利用者は事業所で理不尽な扱いを受け、行政機関で門前払いされ、中にはメンタル不調に陥る人もいる。福祉サービスを利用したせいで体調が悪化するのだ。本末転倒にもほどがある。全国のA型事業所の中には、制度の趣旨にそった運営をしているところも多くある。ただ、行政が責任を持って悪質業者を排除できないなら、就労継続支援事業そのものをゼロから見直すことも検討するべきなのではないか。

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今、タミオさんは失業保険を受けながら別のA型事業所を探している。退職したA型事業所では、B型事業所に移ることに同意した人はほとんどいないと、別の利用者から聞いた。事業者側の思惑は外れたわけだが、痛み分けとはいいがたい。繰り返しになるが、A型事業所の閉鎖は、利用者にとっては倒産、解雇、失業と同じなのだ。

タミオさんは「悪質なA型事業所にはきっちり退場してもらいたい」と訴える。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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